「コラボレーション革命」

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僕は企業の人間ではありませんが、日経BP社から出た本で、
「すべての企業や組織のリーダーに役立ててほしい」とあったので、
市民活動やNPOにも、役立つことがないか読んでみました。
結論から言えば、最近の市民活動で盛んに言われるようになった、
行政と市民の協働と同じで、違う分野の人間が集まって、
新しいことを始める時の、実用的な手法が書いてありました。

企業のプロジェクトでも、行政のプロジェクトでも、
今までのように、内部の人間だけが企画進行するのではなく、
もっと多様な人を取り込んで、コラボレーションする必要がある。
この本では、参加者にこの必要性を理解してもらうことが、
最初に取り組むべきカルチャーの課題として、重要視されています。
コラボレーションに長けた組織の、カルチャーの意味としては、
次のような特徴の列挙から、ここで言うカルチャーの性格がわかります。
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・社員は互いに尊重し合い、情報を共有し、ベストの取り組みをする。
・社員同士のコミュニケーションは頻繁かつオープンに行われます。
・社員は組織の各部門が持つ専門知識をどう活用すればよいかを知っている。
・社員同士はもちろん社外の人材とも積極的に連携しようとする。
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まちづくりの協働においても、多様な当事者を考えた時に、
行政にだけ仕事を任せていては、市民の利益を損なうことがある。
あるいは事業担当者として利益を得る、業者の都合だけが通ってしまう。
そこで本来の受益者である市民が、まちづくりの当事者になるよう、
共通のテーブルで話し合うため、協働のまちづくりが始まったのですから、
まったく違う分野の人が、同じ仕事に取り組む必要が出来たのです。
その土台の部分を、カルチャーとして共有認識するわけです。

そう考えれば、今までとは違う分野の人たちが集まって、
一つの目標を明確にして、それぞれの専門性を活かした知恵を出す。
あるいは各自の得意分野を、うまく活かせるように話し合い、
どのようにまとめ上げて、実行していくかが課題となっています。
これを実現するプロセスとして、共通言語の重要性を説いているのも、
とてもよくわかるし、必要なことだとわかるのです。

ただ本の内容の進め方としては、いくつかの話を同時進行させながら、
要点を明らかにする斬新な試みは、あまり成功しているとは感じませんし、
少しずつ言葉が違ってくることに、腑に落ちない違和感を感じます。
それでも優れているのは、常にまとめてから先へ進むことですが、
このまとめの多さが、煩雑な感じを与えていることも事実でしょう。
まとめが多すぎて、ちっともまとめられていない感じがするのです。

しかし内容を把握した上で、まとめを何かに役立てようとするなら、
例えば「メンバー同士の接し方」で、こんな箇条書きは役立ちます。
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→ 互いに敬意を持って接します。
→ 建設的なフィードバックを尊重します。
→ チーム全体と個々のメンバーの両方の成果を認めます。
→ すべてのチームメンバーが片寄りなく参加することを重視します。
→ 会議は効率的に実施して全てのメンバーが発言する機会を確保します。
→ オープンで率直なコミュニケーションを重視します。
→ 問題に関する議論やディスカッションは客観的に行い個人攻撃はしません。
→ 決定に至るまでは問題に対する評価を下さず広い視野を持ちます。
→ 課題や問題点を指摘する時は解決策も提案するように努めます。
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およそかんな感じで、次々にまとめが出てくるのですが、
こうしたまとめは企業ばかりでなく、市民活動にも有効でしょう。
ただし第3部のテクノロジーの段になると、少し様子が違って、
新しいモバイルなどを使いこなす、ポストPCの話になりますが、
こうした高価な技術を惜しげもなく取り入れるのは、やはり企業であって、
僕らの市民活動が参考に出来るのは、第2部までかなと思いました。

その理由は、企業にとってのコラボレーションの場合には、
少しでも効率よく収益を挙げるために、投資が重要になってくるので、
最新のテクノロジーを使うことが、必須の要件になってきます。
だけど市民活動と行政の協働においては、収益や効率よりも、
市民が直接参加することの意義の方が、大きいことが多いからです。
その点を惑わされずに利用すれば、この本は市民活動にも役立つのです。
特にカルチャーと共通言語の理解は、どちらの場合にも必須でしょう。
 
 
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