おひな様

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井波に住んでいると、木彫のすばらしさを知っているので、
何か自分でも手に入らないかと、思うことがあります。
だけど良い木彫は高価なので、普段はまったく無縁なのですが、
一度友人に男の子が生まれたお祝いに、小さな獅子頭を送りました。
しかし残念ながら、子どもが生まれたお祝いに獅子頭を送るのは、
この地方だけの風習のようで、あまり喜ばれたとは言えません。

それ以来、木彫を注文して作ってもらうことはなかったのですが、
今回は女の子が生まれて、妻の母親が雛人形を買ってくれる、
というので、それならばと僕ら夫婦が気に入っている彫刻家に、
おひな様を彫ってもらうことを思いつき、話をしてみました。
その結果あまり高価なものは無理でも、小さなものならいいと言われ、
お気に入りの作家にきいたら、作ってもらえることになりました。

彼の名前は田中孝明と言って、井波の中新町に住んでいる人で、
その作風は人柄を現すかのように、やさしい感じに満ちています。
おひな様の見本もあって、その通りでも良かったのですが、
さらに姫の写真を持ち込んで、面影が出るようにお願いして、
全体のイメージにも、丸い雰囲気を持つようにお願いしました。
今思えば、実に欲張りな要求をしたものだと思いますが・・・

期日もギリギリで、今日の昼までにお願いしておきましたら、
ジャスト昼前に電話があって、出来ましたと言ってこられたのです。
さっそく持ってきてくれて、見せてもらったのがこの写真です。
布を開いて見た瞬間に、孝明さんにお願いして良かったと思った、
期待通りの出来上がりで、僕ら夫婦はとても気に入って、
妻のお母さんに届け、姫の雛飾りにさせていただきました。

木彫は決してきらびやかではありませんが、美しい造形で、
その形の良さで、優しさや心の強さまで表してくれる。
木彫の井波に住んでいると、木彫は毎日普通に目に入りますが、
それを自分の手元に持って愛で、大切にする楽しみはまた格別です。
これから先何年ものあいだ、姫も大切にしてくれると思えば、
そう高い買い物でもなく、やはりお願いして良かったと思うのです。