おっぱいから見える日本
僕らは最初から自宅出産で、自然分娩を望み、
母乳育児をするつもりで、準備をしてきました。
それは当たり前のことだと、思っていたのですが、
実際に自宅出産を、引き受けてくれる助産士は、
富山県内には、さかえ助産士さん一人でした。
母乳育児をするつもりで、準備をしてきました。
それは当たり前のことだと、思っていたのですが、
実際に自宅出産を、引き受けてくれる助産士は、
富山県内には、さかえ助産士さん一人でした。
病院出産全盛の時代で、ある程度は予想しましたが、
さかえ助産士さんが近所だったので、お願いできました。
それから様々な病院の検査があり、これをクリアして、
なんとか出産を終えたところで、こんどは母乳育児です。
母乳で赤ちゃんを育てる、こんなあたりまえのことが、
日本ではとても困難なことに、思われてきたのです。
母乳でないとは、いわゆる粉ミルクのことですが、
日本でも戦前までは、母乳育児が当たり前のことでした。
それが戦後アメリカの統治下になり、出産は病院で、
育児は母乳ではなく、粉ミルクが主流になったのです。
なぜ母乳よりも粉ミルクかと言えば、病院の都合で、
そのほうが合理的に、規則正しく飲ませられるからですし、
ミルク企業からの支援も、少なからず影響したでしょう。
イリイチの病院批判の中では、病院の都合によって、
様々な人間の営みが、病気にされたり異常とされたりして、
それを矯正するために、治療を行う姿が指摘されます。
同じように子育てにおいてさえ、病院の都合が前面にあって、
規則正しく授乳するためには、母乳は不都合であって、
粉ミルクに頼るのが、病院の都合に叶ったのです。
さらに言えば、母乳は母親の食事さえちゃんとしていれば、
お金に頼らなくても、完全な栄養食品となるわけですが、
粉ミルクは工場で作られるので、経済成長に寄与できるのです。
そのために粉ミルクを作る企業は、大々的に宣伝をして、
自社のミルクこそが、健康で優れた子どもを育てると主張して、
母親たちの気持ちを、母乳よりも粉ミルクに向かわせます。
だけどどんな粉ミルクよりも、母乳の方が優れていると、
WHOとユニセフが言いだして、世界中が認める時代です。
母乳育児を推奨するWHO決議は、世界118カ国が賛成で、
反対はわずかにアメリカ1国で、日本は棄権しています。
棄権したのもわずかに3カ国ですから、これはどう考えても、
アメリカに遠慮して、棄権したようにもうかがえます。
当時アメリカはレーガノミクスによって、生産重視の社会で、
子育てには母乳の方がいいとわかっていても、経済成長のために、
工業生産物である粉ミルクを、増産する方を優先したのです。
やがてこうした方針は、間違っていたとされて方針は転換され、
今ではアメリカでも、母乳優先の子育てが進められています。
ところが日本では、今も相変わらず粉ミルク優先なのです。
さすがに日本でも、粉ミルクのCMこそなくなりましたが、
病院では合理性を優先するために、日常的に粉ミルクが使われ、
この生産会社が、病院に粉ミルクとほ乳瓶を提供するから、
病院出産の人たちは、粉ミルクがいいものだと思ってしまう。
出産を終えて退院する時は、ほ乳瓶や粉ミルクが贈られ、
それは病院からではなく、企業からのモノであるにもかかわらず、
新生児の家族は、粉ミルクによる育児を疑わずに続けるのです。
その結果起きる様々なトラブルは、最近になってようやく、
日本でも指摘されているようですが、世界的には遅れています。
どうしてこんなに遅れているのかと言えば、日本の国が、
子育てよりも企業の育成に力を入れて、経済成長することが、
新しい命を育てるよりも、大切にしているからでしょう。
おかしな子育て支援よりも、正しい思想の普及が必要なのです。