友愛平和への風~緩やかな地球的結集(絆)を求めて【前半】

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友愛と平和を永遠に誓う、鳴門市のベートーベン像
 
公共哲学で師事している、千葉大学の小林正弥先生が、
緩やかな地球的結集(絆)を求めて、呼びかけをされています。
「友愛平和の風」と題されたこの呼びかけ文を、多くの人に知ってもらい、
日本各地で対話型議論が盛んになるよう、全文を2回に分けて紹介します。
 
(以下転載)
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友愛平和への風――緩やかな地球的結集(絆)を求めて
        対話により地球中に吹き渡らせよう
        対話による地球的結集を         

●状況認識:世界史的分岐点
 3・11の東日本大震災原発事故を経て、いま、日本は大きな分岐点にある。
一方では、大震災によって改めて助け合いや絆の意義が自覚されるようになり、
原発問題・エネルギー問題に対して多くの人びとが関心を深めて、紫陽花革命と
呼ばれるような官邸前のデモが注目を集め、パブリック・コメントや熟議世論調
査の結果として、熟考に基づく良質な民意が示された。ここには、友愛や平和、
そして脱原発へと向かう風、友愛平和への風が吹き始めており、新しい良質な民
主主義への息吹が感じられる。

 他方では、こういった民意を無視して原発を維持しようという画策も見
られ、偏狭な国家主義に基づき武力を積極的に行使する政治を復活させようとい
う流れも存在する。そして、日中韓の領土問題が激化して、最悪の場合は、東ア
ジアで武力衝突や戦争が生じる危険も想定せざるをえなくなっている。また、日
本政治においては集団的自衛権の行使を認めたり、平和憲法を改定しようとする
動きも加速する可能性が存在する。  

 次の総選挙では、この2つの流れがせめぎあい、日本政治は大きな分岐点を迎えるだろう。

 そして、これは世界の縮図でもある。オバマ政権の登場により、イラク戦争
終結し、「核なき世界」へのビジョンがアメリカから発信され、核廃絶という
夢が現実的な課題となった。核戦争による人類滅亡というような悪夢から遂に解
放される可能性が現実的に浮上したのである。また、「ウォール街を占拠せよ
というデモのように、貧富の格差をめぐって「正義」が問われるに至った。そし
て、ドイツのように脱原発への決定を下す国も現れ、脱原発への動きは世界的に
広がりを持つに至った。

  しかし、他方で、ヨーロッパの経済危機は予断を許さず、中東ではシリアのよ
うに紛争や戦闘も行われ、イランの核疑惑が戦争を引き起こす懸念があり、アメ
リカでは大統領選で大きな路線の選択が争われている。

●理念と目的:地球的な友愛正義と平和・環境・福祉
 このような世界的な分岐点にあって、私たちは、大きな目的として、広島・
長崎(・ビキニ)の被爆や福島の被曝という二重の体験に基づき、日本から、友
愛(愛・慈悲・仁など)と正義を中心的理念として、地球的核問題(原爆と原発
の解決(反核脱原発)をはじめ地球的な平和・環境・福祉(ないし貧困)問題に
対して、なるべく多くの人びとの地球的結集を図りたいと思う。

 戦争か平和か、核戦争か「核なき世界」か、原発に頼る世界か脱原発か、環境
汚染か地球環境の保全か、貧困か福祉か。これらはいずれも公共的な正義の問題
であり、究極的には地球全体において友愛が人びとの心に灯って現実の世界を動
かすことができるかどうかにかかっている。

そこで、私たちは、地球的友愛(愛・慈悲・仁など)ないし人類愛(兄弟愛・姉
妹愛)を根本的な理念として、地球人としてのグロー バル(グローカル)・ア
イデンティティーに基づき、地上に恒久平和と良い環境 ・福祉という共通の善
と正義を実現することを目指す。友愛に基づいて平和・環境・福祉という共通の
善が実現する世界を「友愛世界」と呼ぶことにし、その実現を集約的に「友愛平
和」という概念で表すことにする。

●運動の精神:差違を超えた公共的な和 
現実の様々な論点においては、このような志を共にする人びとの間でも意見
の相違は存在しうる。大きな共通性が存在する中で多様性が存在するところに、
公共性が成立するのである。そこで、この大きな目的やビジョンを最終的に実現
するためには、差違を乗り越えて、友愛に基づき公共的な和(調和)を保つこと
が重要である。そこで、私たちは、友愛に基づき、「和して同ぜず」(『論語
子路篇)、「小異を尊重しつつ大同につく」という「和」(調和)の精神で協働
することを旨とする。 

 実際には、多くの団体が私たちと共通の目的を目指してそれぞれの形で努力
を続けている。しかし、他方でそれぞれの団体の考え方や行動には差違も存在す
るので、その間で連帯して行動することには問題が生まれがちである。そこで、
私たちは、人びとが多様な党派や宗派に属しつつも、それを超えて共通の目的の
ために、超党派的・超宗派的に連帯し、緩やかに結集することを目指す。このこ
とを可能にするために、私たちの運動においては、内部で党派的・宗派的な勧誘
などは行わないように心がける。また、このような緩やかな結集を困難にするよ
うな、暴力的ないし反社会的な党派・宗派とは一線を画す。

●運動の性格:対話による動態的展開
 また、大きな志を共にする人びとの間でも、具体的な課題については様々な
意見が存在しうるので、意見の一致を無理に求めず、個々人の行動の自由を尊重
する。そして、友愛に基づく対話によりお互いの意見が深化していくことを目指
す。それによって、参加者の意見が変化していくことも充分にありえるので、そ
れを可能にするような対話や熟議の場を積極的に設ける。

  たとえば、友愛平和・環境・福祉の実現のために対話集会を開催すれば、そ
れを通じて私たち自身の意見が深化し、参加者を通じて広く人びとの意識を高め
ていくことが可能になるだろう。意見の相違を認識しつつお互いに承認しあい、
共通の大きな目標の達成に向けて行動していくことが可能になるだろう。このよ
うな対話によって、予め設定された目標や行動を行うのではなく、対話によって
誕生する考え方を尊重し、実践的行動を行うことによって、新しいダイナミック
な運動を展開することが可能になるだろう。私たちは、このようにして運動やそ
の具体的な目標が対話的に、そして動態的に発展させていくことを目指す。> >
 
後半(↓)へ続く