辻信一さんとの懇談会

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10月22日に紹介した「自然農という生き方」の著者で、
ナマケモノ倶楽部の世話人明治学院大学教授でもある辻信一さんが、
アースディとやま2011実行委員会の招きで、富山大学へ講演に来られました。
企画は映画「幸せの経済学」上映とのカップリングで、
この映画に関しては、僕らはすでに5月に上映会をしているので、
見なくても良かったのですが、辻さんがどんな話をされるかは興味がある。

『スロー・イズ・ビューティフル』、『スロ-ライフ100のキーワード』、
『ハチドリのひとしずく-いま、私にできること』、
『だきしめてスローラブ~ゆるやかにしなやかに男と女の性と愛』
『スローメディスン~まるまる治るホリスティック健康論』等々、
彼の著書は、日本のスローライフをリードしてきましたから、
3.11の後に彼が言うところの、「復興ではなく大転換へ」が何を意味するか、
是非とも聞いてみたくて、富山大学まで行って来ました。

さらにこの主催者が、石黒さん宅で辻さんとの懇談会をやると聞いて、
当然のように、自然農をやっている数人が石黒家に向かいました。
実行委員会のメンバーと僕ら自然農メンバーとで、十数人が集まって、
淡いランプの灯りの下で、文子さんの美味しい料理で飲み会の始まりです。
食事が終わって、そのままお酒を飲みながら順番に自己紹介をして、
自然農のこと、川口由一さんのこと、そして 3.11福島原発事故のことを、
みんなで熱心に議論して夜が更け、真夜中まで話が続きました。

途中からは酔っぱらって話していたので、正確には思い出せませんが、
講演でキーワードとされていた、代替論やマインドセットの問題、
補償と罪の問題も、あらためてみんなで考えて議論しました。
例えば講演会の意見交換で、就職との関係で意見を述べた学生が、
社会問題よりも目の前の就職で、仕事に就けるかどうかしか考えていない!
と言っていたのは、余りにも擦り込まれたマインドセットであること。
この作られたマインドセットから、どのように解放出来るのか?

しかし問題ではなく答えを生きようとする、自然農の考え方からすれば、
相手を解放しようとすること自体がおこがましく、禍根の元でしかない。
この複層のマインドセットから抜け出すには、どうすればいいか?
就職の問題を「就職しなければ生活出来ない」と考える限りには、
就職することが解決策ではあるけど、また新たな問題が続いていく。
それはどこまで行っても、お金を稼ぎ続けるしかないとの思い込みの問題です。
このマインドセットを捨て去れば、生きる方法はいくつでもある。

さらにその多種多様な生き方は、間違いではないけど正解とも言えない。
なぜならマインドセットされる以前の世界に、「どうあるべきか」があり、
この問題を解決していたなら、方法は好きにすればいいと言うことです。
その答えこそ「余計なことをせずに自然に沿って生きる」であり、
これが川口さんの言う自然農ではないのか! と話が進みます。
しかし一歩踏み込むと、こうした言葉を使って納得したつもりになることが、
実は大きな落とし穴で、マインドセットに取り込まれることになる・・・

ここまで来れば、人間はマインドセットなしに対話出来るのかどうか?
次第に怪しくなってくるのですが、それなら言葉を超えればいいわけで、
生き方としての自然農とは、自然農から学び取ったことを生きているとも言える。
こうした深い議論をしたうえで、GNPではないGNHとは何かを話すとき、
数値化され得ない幸福の尺度を求める危険性の方が、目立ってくるのです。
例えばブータンで「自然の豊かさ」「伝統文化」「政治の公正」「経済の公正」
を指標や尺度としたときに、何が公正かはマインドセットでしかないとしたら・・・

真夜中に解散して、男部屋と女部屋に別れて就眠しましたが、
最後まで熱心に話をしていたのは、10人ほどだったでしょうか。
この写真は、すでに皆さん話疲れて、それでも話が途切れない、
午前0時過ぎの、辻さんと石黒さんの様子です。
皆さん遅くまでお疲れさまです。そしてありがとうございました。