「DVについて法的支援を考える」

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僕も所属しているNPO法人「Nプロジェクトひと・みち・まち」で、
「DVについて法的支援を考える」会があり、参加してきました。
東京ウィメンズプラザDV法律相談担当で、自立支援、医療関係者向け、
自治体職員向け、調停委員向けのDV研修講師をされているエキスパート、
弁護士の黒岩海映さんを迎えての、お話と意見交換会をする集まりです。
 
DVに対する過去の学びとしては、被害者対策ばかりが行われて、
どうしてもっと加害者対策がないのか、起きたDVの対策を考える以上に、
DV加害者をいなくする方が大切だろう!と学ばされた経緯があります。
今回はまた基本に戻って、現状としてどんな法的支援があるかを学び、
自分たちに何が出来るかを、再確認することが目的の勉強会でした。

まず確認したのが、日本でちょうど10年前にできたDV防止法で、
その後2回の改正を経て施行されている、現状の法的支援の全容です。
大きく分けて6つの内容は、以下の通り。
(1)配偶者暴力相談支援センター(3条)
(2)通報義務・情報提供義務(6条)
(3)福祉事務所による自立支援(8条)
(4)関係機関の連絡協力(9条)
(5)保護命令(10~22条)
(6)職務関係者による配慮等(23条)

児童虐待防止などと大きく違う点は、本人の意思が尊重されることで、
相談するかどうか、保護を求めるかどうかは、本人が決める点です。
子どもの場合はまだ判断力もないし、自力で助けを求められないと考え、
児童虐待が懸念されるとわかった時点で、通報の義務があるのに比べると、
大人は自ら自分の人生を生きているのが基本ですから、自己決定権がある。

たとえ暴力的に扱われていても、本人がそれで良しと思っているなら、
社会はそれをプライベートなこととして、容認するしかないのです。
しかし暴力を受けた本人がイヤだと思えば、その人を守る法的制度がある。
特に特徴的で強力なのが、(5)にある裁判所の保護命令で、
安価で弁護士を立てなくても申請できる上に、受理確率も高いようです。

黒岩さんは実務エキスパートで、具体的な事例を話していただきましたが、
やはり気になるのが、今後どのようにしていけばいいのか?だったので、
僕はその点を中心に、いくつか質問もして答えていただきました。
答えの要点としては2つあったと思うのですが、欧米の現状も含めて、
DV対策は男性の性格的な要因が大きく、解決が難しいことが前提で、

【1】現在は、加害者プログラム以外に有効な解決策がない。
【2】これを根元的に解決するには、子どもからの教育しかない。
と言うことで、過去の男性教育に問題があったと言わざるをえない。
男性の誇りとか強さに対する男らしさとか、困った概念がいくつもあって、
こうした概念を植え付けない、真の男女平等教育が必要とされるのです。

すでに間違って信じ込んでいる固定概念が、直すのが難しいことは、
経済信仰と同じことで、その困難さは容易に理解できますから、
今後僕らが取り組むべきは、被害者の保護に加えての子ども教育でしょう。
被害者の保護は、法的支援も得て着実に進んでいるようですので、
これからは、DVのない社会をめざす子ども教育の充実が求められます。
 
写真は右端が弁護士の黒岩さんで、となりがNPO代表の大坪さんです。