誰も排除されない社会へ

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突然の島田伸介さん芸能界引退は何だったのか?
暴力団排除条例の施行に合わせて、何らかの思惑が働き、
関連する芸能界の実力者が、彼を辞めさせたのでしょうか。
テレビを見ない僕にとっても、気になるニュースでしたが、
ネット版の産経ニュースに載っていた、山口組組長の、
インタビュー記事を読んで、気になることがありました。

まず「異様な時代が来た」と冒頭に前置きした組長は、
「法を犯していなくても当局が反社会的勢力だと認定した者には
 制裁を科すという一種の身分政策で、今は反社会的勢力とは
 暴力団だが、今後拡大解釈されていくだろう。」と話している。
そんな無茶なことはしないだろう!、などと楽観的な観測は、
この国の歴史を知る限り、言えないのが現実でしょう。

取り締まりが厳しくなれば、裏に潜るしかなくなるわけで、
暴排条例よりもそれを危惧するとの発言も、わかる気がする。
一口に山口組と言っても、二次三次の傘下組織ともなれば、
組員の出入りも頻繁らしく、破門になる人が相当数いて、
多くの犯罪は、そうした者が生きるために犯す可能性が高い。
なぜなら、組員でいるためには任侠道を大切にしなくてはならず、
社会や一般人に迷惑を掛けないことは、鉄則だと話される。

そもそも日本の暴力団と任侠とは、どんな関係なのか?
もともと任侠は、社会の最底辺で働く人々を束ねるにあたって、
人間として最低限守るべきことだけを重視した、人間関係の掟です。
さほどの教養もなく、社会の荒波の中で生きていく人々は、
それでも何かのよりどころが必要で、そこに任侠道があった。
社会の細かいルールを守れない人たちでも、任侠道を守ることで、
人間としての誇りを、失わずに生きていけたのでしょう。

その意味では、「やくざやその予備軍が生まれるのは社会的な理由
 がある。そうである以上、俺にできることは、これまで以上の
 任侠道に邁進する組織にすることだ。」との発言も理解できます。
さらに若年齢化する覚醒剤などは、山口組が厳重に禁じていることで、
ひたすら利益だけを求める、不良外国人によるものだと明言します。
つまり彼らは、社会の底辺で寄り添う人たちの核になることを自負し、
そのことを自分たちの存在価値として、自覚しているのでしょう。

港湾荷役作業員の取り仕切りから始まった、日本のヤクザですが、
時代の変化と共に、暴力団として様々な反社会的活動もしてきている。
だけど必ずその求心力となったのは、任侠道であることが日本の特徴で、
こうした精神的な支えを持たない、ヨーロッパ・マフィアとは、
大きく違うと思っているのは、僕だけではないでしょう。
組長がインタビューで言うとおり、法を犯せば罰せられて当然でも、
寄り添って生きる人たちを、排除してはいけないと思うのです。

個人的な話ですが、僕は20代にアメリカに住んでいたとき、
何かと世話になった女性が、横浜のヤクザで経理をしていた人でした。
仕事を引退するとき、内部事情を知りすぎているので危険だとして、
アメリカで暮らせるように、ヤクザの組織で手配してくれたとか。
母娘二人暮らしの人でしたが、もちろん普通に家庭的な女性で、
人間として大切なことを、彼女から教わったことも多かったのです。

写真はインタビューに答えた、山口組の篠田建市組長。