「世界国勢図会」

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公益財団法人である、矢野恒太記念会が編集発行しているデータブック、
第22版で、2011年~12年用の「世界国勢図会」を読みました。
学生の頃には地理で習ったような、世界各国の情勢が一覧で紹介されており、
現在世界がどのような状況にあるかを理解する、貴重なデータと言えます。

第1章「世界の国々」だけを見ても、独立国一覧の基礎データの他に、
独立国でない地域の一覧や、難民に関する情報などもあり興味深い内容です。
また2011年に予定されている主な選挙や国民投票、国際機構や国際会議など、
およそ世界情勢の概要を知るのに必要な情報は、かなり網羅されているのです。

そして第2章「人口と都市」、第3章「労働」、第4章「経済成長と国民経済計算」
第5章「資源とエネルギー」、第6章「世界の農林水産業」、第7章「世界の工業・小売業」
第8章「貿易と国際収支」、第9章「財政・金融・物価」、第10章「運輸と郵便」
第11章「情報通信・科学技術」、第12章「諸国民の生活」、第12章「軍備・軍縮
と割り振られ、全体として世界情勢のすべてがわかるように編集されています。

基本的にはデータブックですので、読書するタイプの本ではないのですが、
図やグラフも多いので、適当に開いて興味深いところを見るだけでも面白い。
例えばエネルギー資源の輸出国として、トップがロシアであることや、
逆に輸入国のトップがアメリカであるなど、同じ大国で逆の事情なども興味深い。
アメリカは生産量も多いので、いかに多くのエネルギーを使っているかがわかります。

そのエネルギーに関して言えば、従来の石油や天然ガスだけでは読みとれない、
風力発電太陽光発電に関しては、設備容量を持って数値を出しているのも興味深い。
風力では、10年前はドイツの発電量が圧倒的に多かったのに、今は中国がトップで、
太陽光は、10年前には日本が圧倒的に多かったのに、今はドイツがトップになっている。
こうした世界情勢の変化も、データを読み解く面白さと言えるでしょう。

このデータブックの数値から、世界のエネルギー情勢を簡略に見るならば、
ロシアは一時期の混乱を脱して、完全に資源大国として国力を増大させており、
中国はその国土の広大さに目覚めたかのか、自然エネルギーの開発に力を注いでいる。
ドイツは科学技術を活かすべく、世界中で循環型社会の先駆者となり始めている。
アメリカの場合は大量の農産物をエタノールにする道を選んでいるようですが、
日本のエネルギー政策は?と見ると、何を目指しているのか数値からは見えません。

せっかく風力、海流、水力、地熱、バイオなど豊富なエネルギー資源に恵まれながら、
この狭い国土に、利権集団による原発を55基も作ってしまった日本ですから、
国の未来を整えるには、政財界の利権構造から変える難題が山積しているのが現状です。
主要国では最も低い公定歩合に、年間予算を遙かに超える負債を抱えて、
税金の3割を借金返済に充てる日本は、すでに中央政府などあてになりません。
まずはそれぞれの地域において、食とエネルギーの自給自立を目指し、
そうした地域の横の繋がりを深めることで、国力を整える必要がありそうです。

僕が個人的に関心のある、世界における情報ソースの変化に関して言えば、
やはり主要国においては、新聞などの紙メディアが発行部数を減らしており、
インターネットと携帯電話が急速に伸びているのが、現代の特徴だとわかります。
これらは10年前には、まだあまり一般的でさえなかったのですから、
急速な世界の変化と情報メディアの発達は、深く結びついているのでしょう。
幸い日本は、このインフラは進んでいるのですから、利用しない手はないのです。

本の紹介のつもりが、少しずつ話が膨らんでしまいましたが、これも感想の一部です。
各章には総評的な解説も付いているので、それを全部読むだけでも世界がわかる。
そんな気楽な気持ちで、好きなところを開いてみるのは知的な散歩と言えるでしょう。
そしてもちろん、正確な国際データに基づいた資料データブックですので、
一冊手元に置いて、何かのチェックに開いてみるにはうってつけの一冊です。
 
 
2700円なので、少々高価ですが、アマゾンの情報は↓こちらから。