「色弱が世界を変える」

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伊賀公一さんの「色弱が世界を変える」を読みました。
副題に、~カラーユニバーサルデザイン最前線~ とあったので、
何か専門的で、テクニカルな内容の本かと思ったのですが、
読んでみるとむしろ文学的で、人間の面白さがわかる本でした。

とは言え僕自身、色弱に対する知識はほとんどなかったので、
まずは Vischeck によるシミュレーション写真を見て、
へえ~、こんなにも違う世界を見ているのかと驚きました。
僕らにとっては一番目立つ赤色が、C型色弱者には識別できない。
そればかりか、同じ色弱でも種類の違うタイプがあることも、
この本を読んで初めて知ったし、知識がまったくなかったのです。

そこで興味津々になりながら、本を読み進んだのですが、
内容のほとんどは自叙伝的なもので、楽しく読み進めます。
まず子どもの頃に、理科が好きだったにもかかわらず、
色弱では理科系に進めないと、周囲から強く言われ続けたこと。
現代でもそうなのかどうか知りませんが、ありそうな話です。

結局は文系の大学に進みますが、学業には打ち込めずに、
アルバイトで自活しながら、様々な人と知り合って生きていく。
そこで知り合った人との縁や繋がりで、新しい世界が開けていき、
やがて彼は大学を辞めて、自分のやりたいことで生活を続け、
そこで知り合った女性と結婚して、めでたく子どもが産まれます。
東京での生活にいったんピリオドを打ち、故郷に帰る。

特に何をして暮らす予定もないまま、子どもの頃からの縁で、
あらためて理科系の電気店に勤めると、世はパソコン時代となって、
パソコンで、色弱者の世界を克服できるのではないかと考えます。
同じような考えの人たちと、繋がりを深めながら、
再び東京に行って、カラーユニバーサルデザインを広めます。

色弱者では無理だと思われた、1級カラーコーディネーターに合格、
今は社会システム理論、色彩学、視覚情報デザインなどの専門家として、
CUDO専属のテクニカルアドバイザーとして、活躍されている。
いわば破天荒な人生の、成功物語みたいな話の本なのですが、
この手の本にはありがちなイヤミがなく、気持ちよく最後まで読める。
その理由は、彼が純粋に自分の人生に向き合っているからでしょう。

彼の人生を大きく動かした、二つの出逢いがあるのですが、
一つは高校時代に、同じ年代の高校生が電動車椅子を作ったこと。
自分も何か社会貢献がしたい!と、初めて思ったきっかけで、
もう一つが“宇宙船地球号”で有名になったフラーの考えとの出逢い。
「 Doing more with less 」が、彼の方向性を決めたようです。

伊賀さんは本の中で何度も、色弱は個性の一つでしかない!と言い、
男性20人に1人が色弱者である現実の中で、デザインがこれを克服し、
色弱者もストレスなく過ごせる社会になることを、望んでおられる。
それは引いては、様々な欠点を持つ我々総ての人間が同じように、
相手の長所短所を個性として認め合い、カバーし合うことで、
より豊かな社会になることを、教えてくれた本だったと思います。
 

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