精神を病む社会

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~2009年、日本人の年代別死因~
(20代死因のトップは自殺です)
 
警察庁の自殺統計によると、今年は前年比3.5%減少したものの、
13年連続で3万人を超えた、3万1690人だったとのこと。
特に昨年は、改正貸金業法の完全施行によって中高年の負債自殺が減り、
それに変わる特徴として、就職に失敗した20代の自殺が増えている。
大学時代に一度も就職活動をせず、旅の生活をしていた僕は、
就職に失敗して自殺するなんて、信じられない気もするのですが・・・

うつ病を中心とした健康問題や、子育ての悩みなどの家庭問題も増えて、
自殺から見える社会問題は、経済よりも精神的なものに変わってきている。
そうした時世を反映してか、今夜のNHK「クローズアップ現代」では、
「若い世代の自殺を防げ~境界性パーソナリティ障害」を取り上げていました。
20代30代で合計7836人の自殺者の中に、この障害者が増えており、
彼らの傾向として、失敗しても再度自殺する確率が高いそうなのです。

精神科医の中には、治療効果が望めないからなるべく関わりたくない!
と言う人まで出てきて、この問題の根深さと対策の遅れが気になります。
そもそもこの障害には、人間関係への不安が大きくあるようで、
(1)見捨てられる事への不安
(2)激しく変化する感情
(3)衝動的な行為
などが特徴的な症状だと紹介されていました。

だけどこうした特徴は、症状と言うよりは未成熟さであり、
以前から学校教育の中で、顕在化していたことではないでしょうか。
余白の無くなった社会で、多様な価値観が見失われてしまい、
偏った価値観の社会で、勝ち組と負け組しか無くなってしまったために、
本来の自分が何者かわからなくなってしまい、不安に陥っている。
一つの生き方しか考えられずに、ひたすら頑張った結果で失敗すると、
自分が見捨てられたと感じ、どうしていいかわからなくなってしまうのです。

思うようにいかなくたって、人は工夫しながら人生を生きていく、
そんな柔軟性を失って、一つ失敗するとどうしていいかわからなくなる。
生物多様性が失われつつある問題は、野生動物だけの問題などではなくて、
人間社会においても同じように、多様性が失われているのでしょう。
だけど究極において、人はいつの時代にも自由でしか有り得ませんから、
多くの哲学者や宗教家は、人間の自由の大切さを訴えています。

生きる上での「自分らしさ」とは、AかBかと言った限定選択ではなく、
AでもありBでもある、あるいはAでもBでもない自分を生きることです。
職業訓練ではない学校教育の大切さとは、この自由と可能性を教え、
どんな状況においても、生き抜いていくための核を教えることでしょう。
有名大学へ進学して、少しでも大企業へ就職することしか教えない教育では、
この先も、自殺する若者を増やし続けるしかないと思うのですが・・・