「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」

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NHKスペシャル「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」を見ました。
多くの知識人が無謀だと思っていた、対米・太平洋戦争だったのに、
当時の政権は、なぜ国際連盟を脱退してまで開戦することになったのか?
陸軍の暴走を誰も止められなかったのが、主要な原因と思っていたら、
昨晩放送されたの第3回「“熱狂”はこうして作られた」によると、
マスコミによる扇動の力が、こうした流れを作ったことがわかりました。

当時はまだ新聞がマスコミの主流でしたが、やがてラジオが台頭して、
特にドイツでは、ラジオによる扇動が国民の戦意高揚を掻き立てていた。
それを知った日本軍部が、同じようにラジオで国民を扇動することを画策し、
勝てもしない戦争へと向かう、戦意高揚を掻き立てていったのです。
最初は批判的な記事を書いていた新聞も、軍部の圧力や不買運動によって、
やがては経営の成り行きのために、軍の意向に添った記事を書くようになる。

こうした事情は、以前から言われていたことではあったのですが、
今回の番組では様々な証人の手記や言葉を検証し、実情を暴いています。
中でも印象的だったのは、満州事変の真相を新聞社は知っていたのに、
自社の経営のために口をつぐみ、それどころか日本の正しさを熱弁する。
踊らされて熱狂する国民によって、開戦への世論が高まってしまうと、
ついには、国力を知るリーダーの誰も勝てると思っていない戦争へ、
種を蒔いた軍部でさえ止めることができず、ずるずると引きずられていく。

国際連盟で脱退の演説をした松岡全権代表は、脱退を敗戦と考え、
苦々しい思いで帰国しますが、マスコミ市民はこれを大歓迎で迎えます。
そしてアメリカに対する宣戦布告や、真珠湾の攻撃に至るまで、
誰も責任を持つことのない、世論と雰囲気によって突き進んでいく。
マスコミに扇動されやすい日本人の国民性が、みごとに現れている上に、
今の時代にも変わらない、マスコミ的知識人や世論の危うさには、
あらためて呆れると共に、根深さを危惧しないではいられません。

自分では「間違っている」と思いながら、周囲に流されていく姿は、
公共性を重んじる日本人の美徳のようでありながら、無責任きわまりない。
さらに現代では、何が正しいとも間違っているともわからない人たちが、
右顧左眄しながら、自らの保身のためにだけ大声を張り上げているのです。
もう一度マスコミの報道を疑い、違う角度からの意見を採り入れて、
自らは自分の生き方に沿った発言を出来るよう、心がけたいものです。