「インビクタス」

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戦後約半世紀に渡り、国際社会の顰蹙を受けながらも、
アパルトヘイト(人種隔離政策)を続けた南アフリカ共和国が、
1994年に全人種が等しく選挙権を持つようになったのを受けて、
その最初の大統領に当選したのが、ネルソン・マンデラでした。
黒人の方が圧倒的多数ながら、産業経済は白人が支配するこの国で、
長い人種差別から生まれた白人と黒人の反目を、どのように融和させるか?
この困難な課題に立ち向かった姿が、この映画のテーマでしょう。

昨年日本で公開されて、さほどの大ヒットではなかったようですが、
今回レンタルDVDで見ると、さすがにイーストウッドは優れた監督です。
マンデラが大統領になってから、人種融和政策がどのような心でなされたか、
そのキーワードが、この「インビクタス」に込められて伝わってくる。
こともとこの原作を映画化する権利を買ったのが、モーガン・フリーマンで、
彼がこの映画の主役を務めることは、マンデラ自身が望んだことでもあったとか。
そしてフリーマンは、この映画の監督をクリント・イーストウッドに依頼し、
彼が望んで引き受けたことから、この映画が製作されることになりました。

ここにマット・ディモンが加わったことで、映画としての話題性も増し、
世界中で、そこそこのヒットをしたのは、当然の結果だったでしょう。
しかし僕がこの映画を気に入ったのは、やはりその中身のメッセージ性で、
内戦になっても不思議がないほどに反目していた、黒人と白人の心を、
どのように一つにしていったかが、この映画最大のアピールだったと思います。
実際に様々な現実社会において、人種差別を頂点とした差別の問題はやっかいで、
取り扱いを間違えれば悲惨な状況になることが、数多くの実例で明らかです。

この映画では、それをラグビーのワールドカップを利用して実現しますが、
そこにはマンデラの不屈の魂があり、それがインビクタスとして繋がってくる。
長い差別時代の収監生活で、決して諦めることなく、挫けることなく、
自分の魂を支配するのは自分しか居ない!と心に決めて対応するマンデラは、
実際に世界の多くの国々の人に、国民融和の希望を抱かせたのです。
何十年ものあいだひどい目に遭ってきた本人が、復讐ではなく融和と協調を説き、
対立する事態には、一つの国の国民としての誇りを喚起することで乗り越えた。
この事実こそ、見る人に大きな希望を抱かせるものだったのです。

お盆休みで帰郷していた兄の希望もあり、この一週間に8本の映画を見ましたが、
たぶんこの一本が、その中で一番深く印象に残った映画だったと言えるでしょう。
あえてもう一本挙げるなら、ハリソン・フォードの「正義の行方」でしたが、
こちらの方は複雑な事情が絡んでいて、素人受けは難しい感じがします。
僕自身はそんな複雑な事情を描いた映画も好きですが、今回は兄の趣向に合わせ、
この「インビクタス」を挙げて、紹介しておくことにしました。
やっぱり監督と原作が良ければ、いい映画になるのは当たり前なのでしょうね!