普段の源氏物語勉強会

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時々このブログでも紹介している、源氏物語勉強会ですが、
特に朗読会などをやらない普段の集まりでは、こんな感じで、
谷口先生(左手前)を中心に、物語の読解を進めています。
谷口先生は、特に源氏物語の専門家というわけではないのですが、
源氏にまつわる、さまざなま文化的知識への造詣も深いので、
当時の色遣い(色合わせ)や、香り(源氏香)のことなどを含め、
日本文化の繊細な感性に関わることを、多く教えてもらっています。

すでに10年くらい続いているのに、今月ようやく「胡蝶」の段で、
一通り全部終わるには、あと10年は掛かるだろうと言われています。
それもまた良し、こうして勉強しているプロセスが人生なので、
普段は忘れがちな日本文化を、商業化したお祭りや行事ではなく、
本来の姿を思い描くのに、絶好の機会を得ているとも言えるでしょう。
皆さん年に一度は京都や奈良へ、物語の舞台を訪ねたりもされて、
僕も誘われはするのですが、まだ旅行に参加したことはありません。

この源氏物語勉強会は、参加の縛りもごくゆるいのですが、
参加者はそれぞれ楽しみに思うところも多く、紫友会と名付けて、
メンバーが順番に、感じたことを書く会報も作っています。
谷口先生の解説も、毎回わかりやすく纏めていただいているので、
これらを綴るだけで、立派な源氏物語勉強の資料にもなるでしょう。
四季に合わせて、朗読会の名目で季節を味わう催しをして、
目に色彩、耳に音楽、鼻に香り、舌に味覚を楽しんでもいる。

平安貴族の身分制度を、批判する向きもあるかも知れませんが、
それぞれの時代の事情は、現代から簡単に推し量れるものでもなく、
時を超えて思いを馳せることで、僕らは光源氏にもなれるのです。
多くの現代人は、当時の貴族よりもたくさんの便利なものに囲まれて、
暑さ寒さも凌ぎやすく、衣食住にも不自由する人は少ないはずです。
それならどれほど、当時の貴族よりも豊かに暮らしているかと問えば、
必ずしも豊かさを感じられない、奇妙な時代に暮らしているとも言える。

百年ほど続いた経済拡大信仰の時代は、ほぼ終わりが見えてきて、
これから新しい価値観を育てる必要がある時に、温故知新の言葉通り、
古きを訪ねるのは、大いに意味のあることなのかも知れません。
ただ僕らは、そうした理屈ではなく、源氏物語の興味深さや、
その登場人物、風景、人心の機微に、つい心が惹かれていくのです。
そこにはとても素直で、人間性に富んだ暮らしの模様が描かれていて、
人間にとって真の豊かさが何か、示唆に富んだ情景があるのです。