「エンジェル・アイズ」

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日本では、あまり人気のない女優かもしれませんが、
とても存在感があって、魅力的なジェニファー・ロペスの、
2001年に公開された映画「エンジェル・アイズ」を見ました。
見る前は、ちょっとしゃれた恋愛映画かと思っていたのですが、
実際に見てみると、心に大きな傷を負った男と女の出会いが、
サスペンス的に、スリリングに描かれていて見応えがありました。

警官であるジェニファーが、交通事故で助けた男ジム・カヴィーゼルと、
劇的な再会をして、運命的な恋に落ちるラブストーリーですが、
ジムはその事故で妻子を亡くしたことから、現実逃避をしている。
かたやジェニファーは、子どもの頃から父親の母に対するDVを見て育ち、
警官になってからは、そんな父を逮捕までして、心に深い傷がある。
彼女は正義漢が強く、母に暴力を振るう父を許すことが出来ないのですが、
父を逮捕までしたことで、家族からは冷たい目で見られています。

まさか背景にDVを背負った映画だとは、思っていませんでしたし、
このDVに関しては、このところ市民活動で取り上げられることが多く、
気になりながらも、自分的にはどう受け止めていいのかわからない。
暴力を振るうことがいけないとわかっていても、それだけではないような、
DVには何か別の視点もないと、正体を見誤るような気がしていた、
その何かが、この映画には描かれていたような気がしたのです。

人間とは本当に不思議で、それ故に魅力的でもあるのですが、
父親のDVを許せなかった正義漢の強い娘が、やがて警察官になり、
母親に対する暴力をやめない父親を許せずに、逮捕してしまったとき、
家族は父を責めるのではなく、彼女を責めて除け者にしてしまう。
彼女はその理不尽に苦しみながら、次第に孤独に苛まされるのですが、
そこで、同じように傷を背負ったキャッチ(ジム)と出会い、
やがて惹かれ合って、お互いの傷がお互いの心を癒していくのです。

もう10年も前に作られた映画ですが、なんだかよくわかる。
DVは決して許されないけど、人間は正しければいいものではなくて、
間違いを犯すからこそ、お互いを許し合う愛情の深さも生まれてきます。
彼女は自分は間違っていないと思うから、DVを許せないのですが、
被害者のためを思ってやったことで、被害者から非難されてしまうとき、
深い絶望に見舞われて、人とうまく付き合えなくなっていくのです。

「私は間違っていない」と思い続けて、孤独に陥っていた女と、
自分の過失で妻子を失ったことから、現実逃避を続けている男が出会い、
その「ありのまま」を受け入れることで、次のステップに進んでいく。
妻に暴力を振るいながら、やっぱり妻を愛している男と、受け入れる女と、
正義や善悪だけでは片付かない人間性は、実にやっかいで不可思議です。
だけどそこに、理屈ではなく生きている喜びもあり、人生の味わいもある。
この映画は、そんなことを感じさせてくれる作品だったのです。
 
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