「私の中のあなた」

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去年予告編を見て、気になっていた映画の一本ですが、
本編を見ないままDVDが出て、ようやく鑑賞できました。
それまでに、原作者であるジョディ・ピコーの「19分間」を読み、
この作家の優れた才能には驚いていたので、その意味でも、
この映画は見る前から、どんな内容か興味津々になっていたのです。

見始めてまもなく、11歳の主人公アナが弁護士事務所を訪れ、
既に末期の白血病である姉のドナーになることを、拒む訴訟を申し出ます。
アナからの臓器提供がなければ、確実に死を迎える姉のことを思うと、
誰しもが、妹の訴えに複雑な気持ちになってしまうでしょう。
だけどアナが出生から背負っている、大きすぎる役割を思うと、
決して彼女を、責められない気持ちにもなってくるのも事実です。

生まれる前から遺伝子がチェックされて、確実に姉のドナーになる。
そんな理由で生まれてきたアナですが、家族の愛情はしっかり受けている。
それなのに、臓器提供以外生き延びる道のない姉に対して、
法的措置にまで訴えて、臓器を提供したくないと申し出るのは何故か?
その理由もピコーらしく、アッと驚くものなのですが、
興味本位に仕組まれた理由ではなく、深い人間理解があるのです。

アナ役のアビゲイル・ブレスリンは、とても好感の持てる女性ですが、
どこかで見たと思ったら、「リトル・ミス・サンシャイン」や、
幸せのレシピ」や「幸せの1ページ」に出ていた、子役だったんですね。
ルックスもいいし、表情や仕草の演技力も抜群で、将来が楽しみです。
そして母親役のキャメロン・ディアスも、過不足のない好感度の演技で、
作品全体の緊張感を、うまく伝えてくれていたと思います。

たぶん映画は、原作の流れにしたがって作ったのでしょう。
ピコーの独特な時間処理が、そのまま映画の中に活かされていて、
時間は自由自在に前後に飛びますから、時々わからなくなるときもある。
でもずっと見ていると、やがてバラバラだった時間は繋がってきて、
そのような順番でなければいけなかった理由も、わかってくるのです。
下手なミステリーよりも、よほど巧妙に仕掛けられた構図です。

見始めてまもなくから、いくらか涙目になっていた僕は、
そのままずっと、涙が乾くまもなく最後まで見終えることになりますが、
アナが訴訟に踏み切った事情を知ったときには、嗚咽して泣きました。
深い愛情に繋がった家族の絆が、こんな訴訟を起こさせてしまうのですが、
それは決して安直なお涙ちょうだいの話ではなく、人間の物語なのです。
命とは何か、生きるとは何か、愛情とは何か、考えさせてくれるのです。

登場人物もそれぞれに個性的な人格があって、愛すべき人たちなのは、
原作者のピコーが、そのように描いてくれているのでしょう。
監督のニック・カサヴェテスは、父親が映画監督で母親が女優、
子どもの頃は父の映画に子役で出演し、自身の初監督では、
母親を役者で起用するなど、私生活から映画漬けの人のようです。

また一本、忘れられない映画に出会ってしまいましたが、
ジョディ・ピコーの才能には、まったくもって脱帽します!
 
 
映画のDVD「私の中のあなた」は、↓こちらから。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B002XHIZBO?ie=UTF8&tag=isobehon-22
 
ジョディ・ピコーの原作「私の中のあなた」は、↓こちらから。
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