「なるほど!ぶんらく」

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昨年砺波市に、子供歌舞伎曳山会館(ゆめっこホール)が出来て、
どんな会館か気にしていたのですが、行ったことはありませんでした。
その会館で、市民講座のような「なるほど!ぶんらく」が催され、
行けなくなった人からチケットを譲り受けたので、行ってみました。

この地域には、昔から曳山の上で催される子供歌舞伎があって、
その曳山を保存して、同時に伝統文化の催場を擁したのがこの会館です。
行ってみると、ちょっとした文化会館のようなコンクリート造りで、
外見的には、多少デザインが和風である以外は近代的なビルです。
全体に天井が高いのは、曳山を収納する空間に合わせたからのようで、
催事場としての多目的ホールは、畳敷きの芝居小屋風でした。

なかなか味わいのある面白いホールだなあ!と感心して見ていると、
周囲にやはり畳敷きの中二階席があったので、そちらに席を取りました。
そこからだとステージがカメラに収まるし、ありがたいことに、
今回の催しでは、客の体験指導は写真を撮っていいと書いてあります。
文楽の「太夫」「三味線」「人形」それぞれ、客が体験指導を受けるので、
そのときは写真を撮っていいことになっていたから、撮ってみました。

驚いたことに、客席から手を挙げて出てきた人は、浄瑠璃を習っており、
太夫に言われるまま、プロの三味線に合わせて一区切り読み上げます!
三味線の時には、普段琵琶を演奏する人が舞台に出てきたりして、
指導を受けたとおりに、見事に初めての三味線をかき鳴らしていました。
それでもやっぱり、一番見ていて面白かったのは、誰もやったことのない、
人形遣いの珍しい裏話や、その扱い方の何とも言えない味わいです。

文楽の人形というものの、本物を見るのはこれが初めてなのですが、
思ったよりも大きくて、実際の人間と変わらない大きさなのに驚きました。
そしてその動きの滑らかさや、三人で一つの人形を動かす呼吸合わせなど、
どれ一つを見ても、よほど練習を積まないと出来ないだろうと思われる。
手、足、首、顔の表情は、全身の動きに合わせて動かすから意味が生まれ、
バラバラでは何一つ意味が通じない!との説明は、実にもっともでした。

そしてこの人形歌舞伎に、太夫の話と三味線の伴奏がついて文楽になる。
これが明治の中頃から大正、昭和の初めにかけて大ブームとなり、
日本中で愛されていたというのも、何だかわかるような気がするのです。
ここで表現されるのは、物語そのものよりも“情”の世界であって、
太夫も三味線も人形も、声で音で仕草で“情景”を現していたのです。
言葉の理屈以上に声音の抑揚で伝えたもの、それが今は失われている・・・。

僕はこの先も、特別文楽に造詣を深めることはないと思うけど、
日本人が長い年月をかけて培った、形としての色気や情の世界は、
やっぱり味わい深いので、後生にも残していってやりたいと思うのです。
使い捨ての消費文化でない豊かさが、ここにも確かにありますからね!