“アホな国民”と狡猾な原子力発電推進機構

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11月26日に発表された、内閣府の「原子力に関する特別世論調査」によると、
平成17年と平成21年の調査結果を比較して、こんなことが書いてあります。

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1 原子力発電に関する認知度

原子力発電は、発電の過程で二酸化炭素が排出されず
 地球温暖化防止に貢献する            35.6% → 50.0% に増加

・使用済みの核燃料から再び燃料として使用できるウラン等を
 回収(再処理)することができれば、ウラン資源の有効利用
 を図ることができる               34.8% → 40.8% に増加
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こんな調子で、原子力発電を推進するための国民合意が広がっているかのように、
様々な項目で4年前の意識との比較を紹介しているのですが、ちょっとおかしい。
この調査の直前に、NUMOの原発推進一大キャンペーンがあったのですから、
まるでキャンペーン効果を確認するような調査内容になっているのです。

実際には「発電の課程で二酸化炭素が排出されない」なんて不可能で、
この発電所を維持するために、膨大なエネルギーが使われている上に、
原子力による発電自体が、海の温度を上げるほどに温暖化を促進します。
しかもそれ以上の問題である“放射能汚染”と分離しては考えられません。

「再び燃料として使用できるウラン等を回収することができれば」なんて、
前回の質問での「再び燃料として使用できるウラン等を回収することによって」
から言い回しを変えたのは、何年かかっても技術が確立できなかったからです。
こんな見通しのない技術に、いったいいくらの税金を投入し続けていくのか?

しかも「高レベル放射性廃棄物処分」に関しては、処分場がないばかりでなく、
処分するためのガラス固化試験に失敗を繰り返して、放射能漏れを起こしている。
こうした現状を一切抜きに、良いイメージだけを抽出したい特別世論調査です。
調査結果の詳細を吟味すれば、誘導的統計であることはよくわかります。

こうした統計調査は、「設問の言い回し」によって人を特定の回答に導きます。
もちろん設問を作った人は、それを知っているから慎重に人々を誘導する。
たとえば今回の調査でも、放射性廃棄物の最終処分場の候補地を作りたいから、
“高レベル放射性廃棄物”は出るものだとして、どうすればいいか問います。

「あなたは、高レベル放射性廃棄物の処分地を、私たちの世代が責任をもって、
 速やかに選定するべきだと思いますか。」こう聞かれてしまえば、
次世代に負の遺産を残してはいけないと思う、善良な人たちは「はい」と答える。
それをもってNUMOは、最終処分場の必要性は国民の合意の元にあるとします。

だけど考えてみれば、こんな“どうにもならないもの”を最初から作らなければ、
膨大な税金をつぎ込み続けながら、技術も確定しない、将来に不安と遺恨を残す、
「高レベル放射性廃棄物をどうするか」なんて問題は、最初から起きないのです。
いつものように、問題を創っておいて、その解決のために国民に負担を求める!

この馬鹿げた政府方針から抜け出す方法は、いくらでもあるでしょうが、
その中で、僕でも考えられる二つの方法は現実的で、当たり前に出来るものです。
一つはエネルギー政策の転換で、自然エネルギーの開発を促進する方法であり、
もう一つは、こんな膨大なエネルギーを使わないで済む社会を作ることです。

それではどうして、こんな簡単な転換も出来ずに原子力政策が続くのか?
生活重視を唱える民主党に政権が変わっても、変わらない原子力政策の謎?
そこにはやはり巨大な利権があり、カネと支持者で動く政治の宿命があります。

これを変えられるのは、主権者である市民の民意向上でしかないのでしょう。

個々人が自給自立した人間となり、公共の情報を公開させて正しく判断すれば、
平和で安定した循環共生型の民主主義社会を作るのは、十分に可能なのです。
地方分権も協働も、そうした方向性の上に広がっていくのだと思うのです。



写真は、
「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」と
「高レベル放射性廃棄物貯蔵ピット」です。