マイナス25%

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政権交代で首相になった鳩山由紀夫さんが、国連総会の演説で、
温室効果ガス排出量を20年までに90年比で25%削減する」
国際公約したことに対し、マスコミでは疑念の声が渦巻いています。
すでに90年比で排出量が増えている日本で、これを実現するには、
現状に比べると、45%ほどの削減が必要になることから、
そんなことは絵に描いた理想論で、現実的ではないと言うのです。
ひたすら経済拡大をしたいような、金儲け主義の人ばかりではなく、
学識者や一般市民でさえ、疑問視している人が多いようです。

それでは、これを疑問視する人は、
温暖化に対して、どんな解決案を持っているのでしょうか?
それとも、温暖化しても平気だと思っているのでしょうか?

いつも思うことですが、日本では現状の積みかさねを重んじるあまり、
この状態が、いつまでも続くことが前提になってしまっている。
そのために、時代と共に変わる社会変化や環境変化に対応が出来ず、
何か起きるたびに「前代未聞で理解できない!」となってしまう。
だけど多くのことには、警告と言っていいような予兆があり、
有限資源の枯渇や地球温暖に対しては、世界中で警告がありました。
早くは1972年に、ローマクラブが「成長の限界」を発表し、
同じ年に国連人権環境特別会議で「人間環境宣言」が採択された。

あれから37年が経って、未だに人類は拡大志向から抜け出せず、
資源を奪い合う陰謀と策略で、大勢の市民が蹂躙され続けています。
その結果、オイル・ピークに見られるような危機が露見して、
あるいは取り返しのつかない、地球温暖化が進行してしまった。
スエーデンに見られるような対応を、早くから世界中でやっていれば、
もう少し違った現状になっていたと思うけど、過去には戻れません。
それでも今やるべきことを、少しでも早くやるしかないのです。
その意味で、到達すべき目標を出した鳩山さんは正しいと思います。

これが「非現実的だ!」と唱える人の現実とは、どんなものなのか?
不都合な真実」を書いたゴアさんが言う、ゆだるカエルとなり、
気がついたら、すべての人を巻き添えに絶滅するシナリオなのです。
そこで日本人得意の、積み重ね型フォアキャスティングは役に立たず、
将来の目標を明確にして、全員でそこへ向かって努力していく、
いわゆるバックキャスティング方式によって、進める必要がある。
簡単に言えばこのようなことですが、現実問題として考えても、
現状から45%の排出削減は、実現可能な数字だと思っています。

そもそも現状の社会生活者は、経済活動の拡大を金科玉条にして、
必要のないものをたくさん買い過ぎ、生産しすぎではないのか?
一時期、売り上げを増やしたいがために叫ばれた“付加価値”なんて、
本来は不要なものを、“便利”と“お得”の魔法によって売りつけ、
社会にゴミや廃棄物を増やしていっただけではなかったのか?
こうした“物欲”に対する執着をやめ、人間性を求めて生きれば、
それだけでも、環境破壊しない幸せを味わえる社会になるでしょう。
破壊的は拡大経済ではなく、自然な循環共生型社会を築くのです。

45%の排出削減では、文化生活が損なわれるという人がいますが、
これほどお馬鹿な発想はないし、事実誤認も甚だしいと言えます。
すでに自然エネルギーによる発電コストは、大幅に低下しており、
この電力で動く車も、まもなく大量生産される見通しが立っている。
インフラが整っていないと言うなら、これこそ公共投資によって、
大量の失業者を振り向ける、未来型の産業になるでしょう。
家電製品の多くは、この10年で電力消費量を大幅に減らしており、
マイナス45%くらいは、もうとっくに始まっているのです。

今不足しているのは、正しい認識で、
正しい認識に従って、行動できるかどうかの選択でしょう。
鳩山首相の公約が、それを促してくれることを期待します。