「釣りキチ三平」

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雨の映画千円日、新しい映画もいろいろあって迷いましたが、
その中から選んで見に行ったのは、滝田監督の「釣りキチ三平」でした。
なにしろ監督と同世代の僕としては、このマンガをよく読んでいたので、
当時のことを思い出すだけでも、この実写映画が気になったのです。
特殊撮影の発達によっても、マンガの実写が面白くなっているし、
この監督は、そうした最新の技術を遊び心で活かすのがうまいのです!

一つ予想していなかったのが、4月1日はまだ春休みだったことで、
映画館には大勢の家族連れがいて、この映画も予想以上に混んでいました。
大型新作が多い時期でもあり、シネコンの中では小さな館での上映ですが、
なるべく両サイドに人がいないことを希望したら、後方左よりのシート。
それでさえも、周囲の子どもやお年寄りがザワザワと話をしていて、
ポテトチップの匂いやら、煎餅を食べる音、袋の音と賑やかです。
こんなんで映画が楽しめるかなあ?と心配でしたが、問題なし!

そもそもこの映画は、深刻に静かになって見るような映画でもなく、
例えばむかし、アメリカで「ロッキーホラーショー」を見たときに、
館内が映画と一緒になって大騒ぎしながら見たのを思い出しましたが、
でもここは日本なので、皆さん映画が始まるとちゃんと静かになりました。
でもってキャストがいい!、ロケ地がいい! 初っぱなの掴みがうまい!
マンガを読んで知っていた所為もあるのでしょう、すぐ物語に引き込まれて、
しかもたくさんのシーンが、マンガと同じポーズと構図で楽しめます。

もうそれだけでも十分に嬉しかったのですが、さらに内容もしっかりあって、
都会暮らしで勝ち組となっている美人お姉ちゃんの孤独を見抜く三平がいい!
魚紳さんと一平お爺ちゃんが「釣りとは何か?」なんて真剣に問い掛けたり、
子どもの頃の想い出から始まって、釣りと人生の絡み合いが親子にあり、
都会生活や田舎生活の、それぞれ文化に対する問いかけまでしっかりある。
そしてこの監督一番の見せ所として、見る者を飽きさせない画面がある。
幻想としての夜泣き谷ばかりでなく、三平たちが暮らす山里が美しい!

あり得ないデフォルメされたイワナを見ながら、僕が思いだしたのは、
海で自分より大きな魚と出合う時の興奮や、魚と対峙する高揚感だったり。
このマンガを見て、長野県の南小谷までイワナ釣りに出掛けたときのこと。
その帰りに碌山美術館に立ち寄って、不思議な体験をしたことを小説にして、
それは後に「遊びをせんとや(不良中年ノート)」に収めて本になった。
そうした様々なことを思い出して、何とも楽しい映画の日となったのです。



もうすっかり忘れていましたが、「遊びをせんとや(不良中年ノート)」
今確かめたら、まだamazonで扱われていましたので、(↓)紹介しておきます。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4886296912?ie=UTF8&tag=isobehon-22