「大丈夫であるように」

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Cocco 終わらない旅 ~として、是枝裕和が撮ったドキュメンタリー映画
沖縄出身の女性で、Coccoという歌手がいることは知っていましたが、
どんな人か、どんな歌うたいかは、この映画を観るまで知りませんでした。
ただ沖縄の辺野古で、米軍基地の移転問題に心を痛めるCoocoという歌手がいて、
その人が、青森の六ヶ所村で起きている事態に関心を持ったと聞いたとき、
沖縄の米軍問題と青森の原子力問題が、同じ弱者いじめの構図であることを、
この歌手が、どのように受け止めたかを知りたいと思って観た映画でした。

Coocoは、1977年に沖縄芸能の大スターをお爺ちゃんとして産まれ、
小さい頃から歌が好きで、高校生の頃にはライブハウスで歌ったりもしている。
20歳に「カウントダウン」でデビューし、ライブ活動を中心に人気が出て、
同年2ndシングル「強く儚い者たち」を出し、翌年には3rdシングル「Raining」
2ndアルバム「クムイウタ」を出して、早々と武道館公演もしています。
その後は活発な音楽活動を続けながら、ゴミゼロ大作戦や平和活動にも参加、
NHK教育「ど~する?地球のあした」テーマ曲「ハレヒレホ」は彼女の曲でした。

さらには、LIVE EARTH - 地球温暖化防止を訴える世界規模コンサート
ジョン・レノン音楽祭2006 Dream Power ジョン・レノン スーパー・ライウ゛
映画「ひめゆり」特別上映会などにも顔を出して、環境・平和に関心を示し、
若い人ばかりでなく、沖縄のオジイ・オバアの心にも繋がる、魂の詩人です。
こんな人を、今まで知らなかったのも残念なことですが、現代社会というのは、
頻繁にマスコミに出てくるような有名人以外の人を、新しく知るのが難しくて、
その有名人が愚かしいと、ついつい社会全体が愚かしいと思ってしまいます。

だけど映画で紹介されるCoocoを見ていると、思わず涙が出てくるくらいに、
人間の本当の姿は、心豊かで美しいものだと再認識させられるのです。
この映画では、特別ストーリーのようなものは、あまり重要ではありません。
もしかしたら、彼女のライブを見に行く、聞きに行くような感覚で観ればいい。
そして彼女の歌声や話を聞いているうちに、たしかに伝わってくるものがある。

沖縄の基地問題を、日本中の人に知ってもらいたいと思って活動していたら、
ファンの一人から六ヶ所村のことを教えてもらって、現地を訪ねてみる。
そこで彼女が見たものは、沖縄と同じ、しわ寄せされた弱い人たちの暮らしで、
沖縄だけが被害者だと思っていたら、日本中に同じような人がいると気付く。
そんな傷を負った人たちに、簡単に大丈夫!なんて言えはしないから、
彼女の口から出てきたのが「大丈夫であるように」という願いだったのです。
沖縄戦で生き残ったことを後悔するオバアに、掛ける言葉と同じように。

この映画に出てきたCoocoは、拒食症状態でガリガリに痩せています。
それはまるで、日本社会の「心」状態を見せつけられるような悲しみを湛え、
彼女の歌い方や歌声は、何かを訴えるために押し出されるのではなく、
むしろ聞くものを思わず引き込んでいく、静かな大自然のようなのです。
是枝裕和が、泣きながらこの映画を撮ったというのは、本当なのでしょう。
社会問題を大上段に取り上げるドキュメンタリーは、何本も見てきましたが、
この映画はまた新たな世界を開く、形ではない試みの作品なのだと思います。

こころに傷を持つすべての人が、大丈夫であるように!
そして誰も苦しめない社会が、実現しますように!
この映画は、そんな願いに心の繋がりを持たせる作品でした。



映画『大丈夫であるように』撮影に同行したフォトグラファーが捉えた物語
本になった「大丈夫であるように」は、(↓)こちらから。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4591107191?ie=UTF8&tag=isobehon-22