航空幕僚長更迭と海外派兵

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これが政府と自衛隊の真実なので、今さら驚くことでもないのですが、
イラク派遣部隊の多国籍軍兵士輸送に関して名古屋高裁が出した違憲判断に、
「そんなの関係ねえ」と発言していた田母神俊雄航空幕僚長が更迭されました。
彼は海外派兵を進める自民党政治家の、本心を代弁していただけなので、
いずれは好戦的なヒゲの大佐のように、国会議員になるのかも知れません。

直接更迭の原因になったのは、「日本は侵略国家であったのか」とする論文で、
田母神氏はこの論文を、職務には関係のない個人的な研究内容の結果だから、
と周囲の論文提出を見合わせるようにとの説得を振り切って投稿しているのです。
これはどこぞの国会議員と同じで、何かをうっかり言い間違えたわけではなく、
本心から思っていることを、正直に申し述べていることがわかります。
これが現在日本の自衛隊という、軍隊トップの考え方なのです。

彼の考えは、たとえば集団的自衛権の行使を禁ずる憲法解釈などを、
東京裁判のマインドコントロール」と批判して、名古屋高裁の判決を無視、
日中戦争も「我が国は蒋介石により戦争に引きずり込まれた被害者」として、
過去の戦争を侵略だったと認めた村山談話を、完全に否定しています。
さらに旧満州朝鮮半島が「日本政府と日本軍の努力によって圧政から解放され、
生活水準も格段に向上した」と過去の植民地支配を正当化する人でした。

どうしてこんな人が自衛隊のトップなのか?と訝しく思う人がいれば、
現在のイラク戦争に荷担する政府が、何と説明しているか思い出せばいいのです。
彼は日本の過去の戦争をめぐって、「我が国が侵略国家というのは濡れ衣だ」とし、
「多くのアジア諸国大東亜戦争を肯定的に評価している。我が国が侵略国家
だったなどというのは正に濡れ衣だ」と本気で考えているわけですが、
これはイラクに当てはめれば、「テロとの戦いに引きずり込まれた被害者」
イラク国民を圧政から解放し、民主主義の国造りに貢献する」と同じです。

政府は、あまりに真実であるこの相似性に触れられたくないために、
彼の考え方を了解して航空幕僚長にしておきながら、表面化すると更迭を決めた。
若い隊員の命を預かる幕僚長としては、矛盾無く存在していたかったでしょうに、
口先では過去の戦争を侵略で遺憾としながら、実際には海外派兵を進める政府は、
彼にとってどのように映ったのか? 伺ってみたいところではあるのです。
イラクアフガニスタンへの派兵が、彼らの利益のためだと言うなら、
過去にアジアへ進軍したのも、彼らの解放のためではなかったのか!

この国の政治家は、いつまでアメリカの言いなりになっているつもりなのか?
たしかにかの帝国は強大で、逆らって無事に生き延びることは難しいかも知れない。
しかし、だからこそ、我々には平和憲法があることを忘れてはいけないのです。
行政にも軍隊にも企業にも民間にも、この国が何処へ向かおうとしているのかを、
矛盾無く指し示して、国民に理想を持たせてまとめることが政治の一番の役割です!

今回は政府自らの矛盾を露見させた幕僚長ひとりを更迭することで、
これで政府が責任を果たしたなどとは、ゆめゆめ思わないでいただきたい!