パキスタン・タリバン

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アフガニスタン東部のジャララバード近郊で、
NGO「ペシャワール会」の農業指導ボランティア活動をしていた
伊藤和也さん(31)が殺害された事件が、大きな波紋を広げています。
このNGOが、現地で長く井戸掘りをしてきた中村哲さんが始めた、
きわめて現地のニーズに合った活動で、地元住民とも溶けあっていたのです。
そんな優れたNGO活動の、中心的な人物が殺害されたとあって、
アフガニスタンの治安悪化と、日本人も信用されなくなっている事実が、
否応なしに明らかになったと言えるでしょう。

事件の背景はいろいろと解説されていますが、
二つの大きな要因があるのは、間違いのないところだと思います。
一つは日本の自衛隊が、イスラムに対して米軍と行動を共にしており、
アフガニスタンの情勢に対してさえ、自衛隊の派遣が検討されていること。
もう一つは、これは日本ではあまり報道されていない気がするのですが、
パキスタンで、アメリカの圧力と国内事情の板挟みになったムシャラフ大統領が、
議会で圧倒的劣性になったのを受けて、突然辞任してしまったこと。
これでパキスタンタリバンが、一気に勢力を強めていることです。

この二つの要因は、イスラムアメリカの構図で、
アメリカのチカラが弱まってきていることを示しているのです。
今やパキスタンからアフガニスタンにかけた、広い中央アジア一帯で、
強い軍事力による介入と破壊を続けるアメリカへの反感は、強まる一方で、
もう事実として、第三次世界大戦に突き進みつつあるのかもしれません。
さらにこの中央アジアには、チベット問題、チェチェン問題、グルジア問題、
とすでに多くの血を流している事件が連なっているばかりでなく、
パキスタンは、イスラム圏で唯一の核兵器保有国でもあるのです。

今ではまったく治外法権となった、パキスタンの北部山岳地帯で、
イスラム原理主義の人たちが次々に武装して、タリバンになっている。
このパキスタンタリバンなら、アフガン・タリバンと違って古いNGOに対し、
敵の仲間として躊躇なく殺害することを、厭わないのではないかと思うのです。
中村哲さんは、伊藤さんの志をムダにしないためにも活動を続けると言いますが、
今や地元で生活する人々やボランティアスタッフの志とは無関係に、
枯渇資源の奪い合いで有利に立ちたい日米の思惑は、イスラムの反感を煽り、
ついに日本の民間人にも人的被害が及んだと見るしかないでしょう。

敵の敵は味方と考えれば、いずれロシアはパキスタンに近づくかもしれない。
ロシアとしては絶対に使えない核兵器を、パキスタンに使わせるかもしれない。
北朝鮮やイランでも、再び核開発が盛んになっていくでしょうか?
この負の連鎖をどうやって止めるのかは、わかっているのです。
限られた資源を奪い合って、経済成長を求め続けるのではなく、
少しでも早く、食とエネルギーを自給自足出来る国造りをすることで、
自衛隊による資源確保などと言った、幻想を持たないようにすることです。
今や経済成長を求めないことが、平和活動でもあるのです!