「SOMETHING TO REMEMBER」

イメージ 1

今話題の政界ドラマ「CHANGE」の主題歌として、
大御所歌手マドンナの「マイルズ・アウェイ」が使われています。
マドンナの曲を聴くのは久しぶりなのですが、この曲を聴くと、
なぜか「SOMETHING TO REMEMBER」を思い出してしまいます。
大好きなアルバムだったのに、長いあいだ聴いていませんでした。
久しぶりにCDを探し出して聴いてみると、想い出が蘇ります。

このアルバムが出た当時、僕は多摩市に住む会社員でしたが、
僕をその会社に誘ってくれた社長が倒れ、岐路に立つ時期でした。
バブルが崩壊しても、僕はかなり優遇された条件の社員でしたが、
それが逆に反感を買っていたこともあって、難しい立場でした。
体調も崩し、そろそろ会社を辞めようか、と考え始めた春に、
新しく入ってきた若い女性と、密かに恋に落ちてしまいます。

何度か一緒に出掛けたり、僕のアパートにも遊びに来るようになって、
思い切って伊豆へ泊まりがけの旅行へ誘ったら、来てくれました。
僕はカナダから逆輸入バージョンのプレリュードに乗っていて、
平日に会社を休み、二人で泊まりがけのドライブに出掛けたのです。
南伊豆あたりは、以前付き合った女性と何度か出掛けていたので、
山あいのおしゃれなプチホテルで、楽しい夜が迎えられるはずでした。

ところが僕は、彼女と肉体的に結ばれることができませんでした。
当時の僕は、次第に不本意になっていた仕事のストレスなどで、
自律神経がおかしくなっていて、異常な動悸がしたり、目眩がしたり、
顔面が引きつって、まぶたが痙攣するようなことさえあったのですが、
まさか性交ができなくなっているなんて、とてもショックでした。
それでも彼女と別れたわけではなく、付き合いは続きましたが、
その頃車の中で聴いていたのが、このアルバムだったのです。

それから彼女とは、何度も旅行に出かけ、アパートにも泊まり、
男と女として貪欲に愛し合ったにもかかわらず、性交だけはなかった。
最後はそれが原因で別れたけど、切なく愛おしい時間が流れていました。
僕のアパートと彼女の家は、歩いていけるほど近い距離だったのに、
車で送り迎えをしては、遠回りして時間を長引かせていたものです。
別れ際のキスと、見つめ合う時間の幸福は、恋そのものでした。

だけどそう、このアルバムは、すべてを予言していたのです。
「I WANT YOU」「TAKE A BOW」「CRAZY FOR YOU」「ONE MORE CHANCE」
そして今にして思えば、僕は中年にして、恋を味わっていたのでしょう。
肉体的な性欲の味を知っているのに、一歩そこに届かない故に限りない、
どこまでも追い求める、限界線上の恋を全身全霊で受け止めていた。
そして彼女は平凡な家庭を求めて、僕の元を去って結婚した。

もしかしたら、それ以来このアルバムを聴いていないかも知れない。
あれから僕はまた新しい恋もして、すっかり性交もできるようになって、
あの一時期は、奇跡のように二度目の思春期を味わっていたのでしょう。
I want you ...と歌い、 Say good by ...とささやくマドンナの声に、
僕は叶わぬ夢としても、人間の切なさを感じとっていたのです。

 いのちのかぎり、恋せよ乙女♪


マドンナのバラードコレクション「SOMETHING TO REMEMBER」は(↓)こちら。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00004VP22?ie=UTF8&tag=isobehon-22