公園の夢・鎮守の森

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公園の夢・鎮守の森


池田香代子さんとお話をしたあと、
自分は911事件の後で何をしたのか考えていたら、
翌2002年には「BioDome702」と言う本を出し、
「自然農学びの場」の活動にも参加し始めていました。
さらに環境緑化新聞の「みどり提言賞」に応募して、
最優秀賞をいただいていたのを思い出したので、
その時の原稿を、ここに紹介しておきます。

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~ 悠久の自然を身近に ~

 広い平地で、たくさんの緑に囲まれて、芝生の上に寝転がり、
花壇や噴水を眺めながら散策する。そこにはトンボ、テントウムシ
といった昆虫から、両生類、鳥類、哺乳類といった、様々な生物が
息づいている。僕らが公園のイメージに見る夢は、豊かな平和と安
らぎの象徴なのかもしれませんね。でもそんな欧米スタイルの公園
に、僕はちょっぴり不満があります。

 おだやかな四季に恵まれ、自然が豊かで人に優しかった日本では、
欧米のように人工的な公園を作らなくても、自然に親しめる場所は
たくさんありました。子供たちの安全な遊び場所としても、お寺や
寺院の境内があり、少し冒険したい年齢には、裏山や鎮守の森が
控えていました。ところが現代では、大都市に限らず身近な自然は
少なくなって、公園がその役割を担っています。

 人は誰でも緑の自然空間がないと休まらない。だからどんな町作
りにも公園は欠かせないのですが、作られた公園の利用実態を見て
いると、あまり有効に使われているとは思われない。僕はその理由
を、公園が欧米的な人工物になりすぎて、日本人の感覚にはよそよ
そしくなったからではないかと思うのです。日本の公園は、もっと
日本的であってもいいのではないでしょうか。それは単に日本様式
を取り入れた欧米的な公園を作るのではなく、付き合い方から日本
的な、自然との一体感を味わう場所を作るということです。

 豊かな営みを持つ自然の中で時を過ごし、そこで受け取った見え
ないものが、やがて長い時間をかけて人の心を育てていく。日本文
化をはぐくんだ雑木林や裏山が、やがて日本的な公園として生まれ
変わって、ありのままの自然が大切にされていってほしい。少なく
とも僕が公園に託して見る夢は、たとえば古い鎮守の森のように、
なが~い時の流れを優しく見つめる、悠久の自然を身近に感じさせ
てくれるものであってほしいと思うのです。
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日本文化を伝統芸能の中に見る人は多いでしょうが、
僕はそうした人工的な所作以上に、直接自然と向き合うこと、
自然との対話にこそ、日本文化の原点があると思っている。
この考えは、今も少しも変わっていないのです。