日本外交とリーダーシップ

高岡法科大学で行われている、富山県寄附講義は、
去年は冤罪の話しが、タイムリーで興味深かったけど、
今年は「日本外交と科学技術リーダーシップ」が面白かった。
これは、京都大学工学研究科の竹内佐和子さんの講義で、
国際的にポスト京都議定書の将来枠組が検討されている中、
なぜ日本の技術は、世界標準になれないのか?と問うものです。

日本は京都議定書で、-6%のCO2削減を表明しておきながら、
目標達成年度の2010年まで、あと2年しかない段階で、
マイナスどころか、+7%になってしまっているわけですから、
すでに目標達成を実現しそうな、ヨーロッパ諸国に比べれば、
信用されないのも仕方がない!と言えないこともないわけです。
それでも、省エネやC~2削減の技術は、進んでいる日本なのに、
どうしてこれらの技術が世界標準になれないか?って話しが面白い。

日本国内で、将来が見出せないまま混乱している現実がある限り、
海外へ持っていっても、イメージの共感が生まれるはずがないので、
いくら技術的に優れていようが、誰も納得しないと言うのです。
さらには、そうした技術を使って何をしようとしているのか?
世界に示す将来ビジョンがないから、個別技術に過ぎなくなる。
国際的な取りまとめ会議での、ロビー活動もできていない、など、
外交のお粗末さや、国内での価値観転換の遅れなどが挙げられました。
地域で優れたひな形があって初めて、国際的に認められる時代です。

この竹内さんの公開授業は、90分授業を3回おこなうもので、
合計4時間半も時間をかけて行われる、中身の濃いものでしたが、
内容はレジュメに従いながらも、取り上げる事例などは柔軟に変えて、
盛んに質問や意見が飛び交った会場に合わせて、臨機応変なものでした。
会場参加者との対話を大切にして、いつでも質問を受け付け、
それぞれの発言を受け止めて認めた上で、自分の考えも述べられる。
これはあたりまえのようで、実際にはなかなか難しいことなのです。
たいていの授業では、先生が自分で言いたいことを言うだけですからね。

特に二日目の今日は、最後の授業として、この地域のことを取り上げ、
3000人以上人がいる場所を「都市」とするアーバンデザイン構想で、
これからの高岡都市開発と、都市経営を主題に話をされました。
キーワードとしては、以下の通り。
 ○コンパクト・シティ作り
 ○エネルギー・廃棄物・ヘルスケアーマネジメント
 ○特長を活かした地域資源の活用
 ○医療ユビキタス・マイクロ技術
 ○健康や環境指標の計測インフラ
 ○文化遺産の活用
 ○都市環境経営のビジネスモデル
 ○マネジメント事業会社の活用

これを高岡に当てはめて考えた場合、
 ◇意識の高い豊かなシニア世代
 ◇シニア向け学校
 ◇酒と食材のツアー
 ◇瑞龍寺などの文化遺跡巡り
 ◇企業進出の実績
 ◇温泉施設の豊かさ
 ◇ゆっくり過ごせるリゾートインフラ
 ◇高齢者が眠らせている財産資金
など、活用要素は十分にあると思われる地域なのに、
これを活かそうとする具体的な活動が貧弱なんじゃないかとのことでした。
確かにそうで、実際に高岡市の繁華街と言われる場所を回って見た印象を、
「これはもう見るからに衰弱した街」と思われたのもわかる気がする。
冷静に客観的に見れば、高岡は間違いなく寂れているのです。

そこで竹内さんは、この状態を打破できるのは会社組織と提案される。
エナジー活用)(コンテンツの充実)(環境健康産業の育成)
(研究開発と教育)(具体的な住宅としての場)
これら様々な要素を統合してマネジメントできるのは、会社しかない。
そこをコアにして、行政、商工会議所、研究機関、資本などをまとめ上げる、
総合インフラ・サービスとしてのインベストメント会社が大切と話されました。
会場参加者からも、たくさんの意見が述べられて、意識は十分に高いので、
あとは中核になる「場」としての会社が必要なのだと説明されたのです。

NOP活動などが、イベントでしか盛り上がらない現状をどう打破するか?
と僕がヒントを求めたら、竹内さんは即座に、「イベントはいらない」
「人数もいらない」「大切なのは具体的にアイディアを実現するスタッフ」
と答えられたのは、すでにそうした経験をお持ちだからの即答でしょう。
彼女は自分で会社も持っているようですが、ひとところに執着しないで、
次々に自分のアイディアを提案し、実現していくところがアグレッシブです。
行政を取り込みはするけど、頼りにはしないで、自分たちで行動する!

4時間半の授業は、最初から最後まで刺激的で面白いものでした。
参加した多くの人が、自分で動かないといけないことを実感したでしょう。
僕もいくつかヒントをいただいて、これから具体的な活動に活かしたいです。
この授業を企画された谷口教授は、以前からの僕の知り合いですが、
法科大学の学生にならないかと勧められてしまいました。そう言えば、
生涯学習の講演でも、成人後に学生になることを勧めていたような・・・


竹内佐和子さんの「21世紀型社会資本の選択―ヨーロッパの挑戦」は(↓)こちら。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4381012275?ie=UTF8&tag=isobehon-22