「過剰と破壊の経済学」

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最近ビジネス関係の本は、滅多に面白くないのですが、
池田信夫さんの「過剰と破壊の経済学」は良かったです。
副題に、~「ムーアの法則」で何が変わるか?~とあり、
帯に、グローバル資本主義社会の未来予想図!!と書いてある。

最後の未来予測に関しては、視野が狭い気もするけど、
池田さんはそれをわかっていて、ビジネスの態度としては、
的を一つに絞らないことを、重要なポイントとしている。
なるほど、自分達だけで「これだ!」と決めつけなければ、
やがて登場するスタンダードを見逃さないだけでいいと言える。
大きな会社やビジネスの戦略としては、必須の要素でしょう。

どうして、そうした態度を大切だと思うようになったのか?
そこにこの本のポイントがあって、過去の分析がされています。
まずキーワードになっている「ムーアの法則」ですが、
半導体の集積度は、18ヶ月で2倍になる」と言うもので、
これを半導体のコストで見れば、18ヶ月で半分になるのです。
素材のシリコンは自然界に大量にあって、資源不足の懸念もなく、
この法則は現代も続いており、今後も10年は続くと言われる。

この法則に基づく未来予測は、1980年頃から始まって、
当時の巨大コンピュータ会社IBMや、日本などの政府では、
ムーアの法則によって、コンピュータの性能は次第に良くなり、
やがてスーパーコンピュータ→人工知能と考えて研究を重ねます。
ところが実際には、高級化ではなく、低価格パソコンが普及し、
この日用品化したパソコンが、飛躍的に高性能化することで、
過剰性能となった高級機は、売れなくなる現象が起きたのです。

ここで高性能化したパソコンのOSを独占したウインドウズが、
その後飛躍的に世界中に普及して、世界標準にまでなりました。
これはムーアの法則によって大量普及したパソコンにとって、
ボトムネックだった、マシン語とソフトの接続を担ったからです。
ところが90年代の後半に、アメリカで独占禁止法の裁判において、
マイクロソフトは有罪にはならなかったのですが、その理由が、
インターネットにおけるプラットホーム競争があるから問題ない!
とするもので、実はこれが現代のグーグル躍進に繋がっている。

今世紀になってもムーアの法則が続いた結果、さらには、
インターネット環境が、高速通信網のすさまじい普及によって、
僕らは10年前には考えられなかった、大量のデータを受け取れる。
すなわち、パソコンの性能もネット環境も日用品化したことで、
これらのものは、もう希少価値が無くなって、商品価値が少ない。
それでは何が希少な商品価値を持つかと言えば、人間なのです。
パソコンで標準となったグラフィック・インターフェイスなどは、
ネックになった人間の作業を素早くさせたので、大成功している。

そしてこのプラットフォーム化と、膨大な情報量の整理サービスで、
今やグーグルが、世界で最も成長する企業になっているのです。
すなわち、膨大な情報が日常的に飛び交うようになった社会において、
ボトムネックになっている情報検索の、需要に合わせたサービスをする。
これが、ムーアの法則によって始まった時代の、現代的状況であり、
こうなることは、10年前のマイクロソフト裁判で明白になりました。
その明らかになったことを実行したのが、グーグルだったのです。
やがてはTVも、ネット上の一つのサイトに過ぎなくなるのでしょうか。

本の中では、日本企業がなぜグローバルスタンダードになれないのか?
官民一体の縦割り、囲い込み開発の弊害が書かれているのも面白いです。
これは僕らが市民活動をするときにも、すぐに見える役所の問題点で、
こうした日本独特の、閉鎖的官僚的利権構造をそのままにしては、
市民活動どころか、優れた技術を持つ日本の産業さえダメにしている!
ってことを、薄々気付いてはいても、やっぱりか!とわかるのです。

さらにもう一つ、本の内容から特筆すべきは、個人情報と著作権で、
実は僕自身もブログ活動の中で、何が個人情報か著作権か疑問に思い、
注意して見ると、多くは悪事の暴露を恐れる人たちが保護を唱えている。
真に公共のものは、本人の都合に関係なく情報は開示されるべきで、
優れた作品などは、自由に使われることによって価値が高まるのです。
そうした自由化を考えないと、10年後の社会は問題の山になるでしょう。


今日の写真は、浮き釣りの獲物で美味しいノコギリダイです。


池田信夫さんの「過剰と破壊の経済学」は、(↓)こちらから。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4756150772?ie=UTF8&tag=isobehon-22