日本社会文学会

イメージ 1

こうした学会があることも知らなかったのですが、
富山で初めて、全国大会が行われることを知って、
富山大学での研究発表会を、聞きに行って来ました。
社会と文学の繋がりをどのように捉えているか、
日本海の出来事としても、おおいに興味がありました。

三日間の日程のうち、僕が参加したのは10日の初日だけで、
この日は連続して八つの研究発表がありました。

「父・翁久充と移民文学」    逸見久美 元聖徳大学
小泉八雲と富山」       高成玲子 富山国際大学
「小寺菊子と『女子文壇』」   金子幸代 富山大学
中野重治と濱口國雄」     小川重明 中野重治を語る会
室生犀星と表棹影」      笠森 勇 金沢学院短期大学
日本海詩人とその歴史的意義」 福田美鈴 福田正夫詩の会
「岩倉政治における思想の冒険」 森 葉月 国際基督教大学
「稲熱病に至る道」       秦 重雄 大阪府立成城高校

高成さんは体調不良で、富山大学の学生が代役をされましたが、
その他は皆さん、その道の第一人者のお話だったので、
とても興味深く、最先端の研究成果を聞かせていただきました。
その中でも、森さんと秦さんの岩倉政治研究の話には引き込まれ、
同じ井波出身者としても、彼の人物像に惹かれるものを感じました。

秦さんのお話は、岩倉政治のあらゆる文献から直接聞き取りまで、
これ以上に彼のことを知る人はいないと思われる緻密さで、
あらゆる著作から、岩倉の人物像を浮き彫りにしてくれました。
用紙10枚にまとめられた資料は、岩倉研究の集大成と思えます。

それに比べ、森葉月さんは専門の宗教学から岩倉を見据えます。
岩倉は親鸞浄土真宗の風土で育ち、貧困や病苦、軍隊体験の後に、
大谷大学鈴木大拙や戸坂潤の教えを受けて政治と文学に目覚める。
自分個人を救う宗教から、多くの他者を救うべくマルクス主義に走り、
反宗教からさらに、脱宗教へと進む中で、文学者として成功する。

自然法爾』をキーワードとする岩倉思想の現代的意味を、
①「古典」的な思想の再検討
②目的と手段を正しく把握し、行為することの重要性を示唆
③二者択一的、排他的でない、より普遍的、包括的な思想を形成する可能性
③人間のより普遍的な幸福の在り方を模索していく契機を示す可能性がある
この4点に示されたこともわかりやすく、参考になりました。

葉月さん発表(写真)のあと、会場からの質問で野間宏に言及され、
野間文学では宗教と社会運動を統一しようとしたのに対し、
岩倉文学では統一ではなく「それぞれ役割を持つ」自然法爾とした、
とのお話、これが僕にとっては一番の収穫だったかもしれません。


岩倉政治「空気がなくなる日 (おはなし名作絵本 24)」は(↓)こちら。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4591005518?ie=UTF8&tag=isobehon-22