「七人の侍」

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数日前に、たまたまラジオを聞いていたら、相本商店の店長が、
ファボーレで「七人の侍」をやっていると言っていました。
黒澤明全盛期の代表作ですし、世界的にも有名な作品ですから、
僕も過去に見たことはあるのですが、今見るとどう感じるか?
どうしても見たくなって、ネットで上映情報を調べてみたら、
今日の 16:50が最後の上映だと分かりました。

そこで午後から少し、かおり米の稲刈りを済ませてから、
ファボーレまで足を運んで、何十年ぶりかで映画を観ました。
ほとんど真四角の白黒スクリーンで、フィルムが劣化しているのか、
音声が聞き取りにくくて、ザラザラと雑音が入っている。
だけど、それが気になったのは、最初の10分か20分だけで、
その後はグイグイ作品の世界に引き込まれていって、
気が付いたら2時間近くが過ぎて「休憩」になっていました。

この映画は、ストーリーも面白いけど、キャラクターが秀逸だし、
時代考証が驚くほどしっかりしていて微塵の隙も感じさせない。
まず風景がすばらしいし、戦国時代の荒れた町中の様子も、
まるで本当にこうだったに違いないと思うくらい、よくできている。
さらには武士、町人、農民、場末にたむろする人間まで個性的で、
現代の映画によくある類型的なサムライなど一人もいない。
農民百姓だって、それぞれ事情を抱えた個性的な人間になっている。

さあ休憩が終わって後半になると、いよいよ七人の侍が村を守る。
このロケ地そのものを地図にとって、作戦を練っていく、
映画の進行と同時に、見ている方も一緒になって考えてしまう。
そしてこの七人のキャラクターの中で、一番心を惹くのは久蔵だ。
寡黙ながら、常に自分がなすべき事を心得ていて抜かりなく、
剣を使えば誰よりも強いのに、心優しく、思いやりもある。
こんな男、どこにいるものかと思うけど、やっぱカッコイイのですよ!

悪人は悪人として分かりやすく、その点での深みはないけど、
これは何と言っても、観客を楽しませるエンタテイメントであって、
その上に、映画を観た人は人間の姿を見せられ、我が身を見る。
この映画を、もしも70㎜のフルスクリーンで見ることが出来れば!
と想像するだけでも、心躍るものがある、そんな映画なのです。
しかしこの田畑の風景から、山里の姿、荒廃した町並までを、
これほど正確に再現することは、もう困難なことでしょう。

最後に、今回紹介した写真は、村を守る戦で亡くなった者を、
葬った墓の様子を撮った一枚の写真を見つけたので、載せました。
戦国時代はおろか、その後においても、例えば浄土真宗に墓はない。
墓を作る習慣は、ほとんど商業主義と共に起きてきたことで、
もとはこうして土盛をしただけの埋葬が普通だったのです。
子や孫の代には覚えていても、その次の代には忘れられて土になる。

そうしたことまで、しっかり時代考証をしてあるってことは、
ほとんど、その時代を生きたと同じことに違いないでしょう。
学生時代に映画を作りたいと思った僕は、旅の生活をしながら、
場所だけではなく、時をも同じように旅したかったのかもしれない。
想像は限りなく広がって、不思議な感動に満たされてかえってきました。
やっぱ、映画っていいなあ!って、あらためて思ったのでした。


七人の侍」は、既にDVDでも発売(↓)されています。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000UH4TRS?ie=UTF8&tag=isobehon-22