「燃料電池と水素エネルギー」

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SoftBank Creative が出しているサイエンス・アイ新書の一冊で、
システム工学の専門家、槌屋治紀さんが書かれた燃料電池入門書。
このシリーズは、最先端の技術を取り上げていて面白いだけではなく、
科学技術を、社会的意味にまで踏み込んでいるのが好印象です。

この本では、そもそも燃料電池とは何か?から始まるのですが、
燃料電池と呼ばれていても、いわゆる蓄電する「電池」ではないとか?
最初からわかるようなわからないような化学反応の話が出てきます。
そのわからなさを補うために、たくさんの図解がされているのですが、
いわゆる「化学」に関しては、なかなか頭が追いついていかない。

ところが「石油の時代から新エネルギーへ」の話しあたりから、
環境問題の切実さからエネルギー問題に関心をもった僕なんかには、
やっぱりそうだろう!と思われる記述がたくさん出てくるのです。
そして石化燃料に代わるエネルギーの一つとして、水素が登場する。
この水素エネルギーの利用を総じて、燃料電池と呼んでいるようです。

この燃料電池がいかに優れた可能性をもっているか、に話が進み、
風力や水力、ソーラー発電の現状や将来性などと比較しながら、
具体的事例としても、燃料電池実用化の進み具合も紹介しています。
さらに太陽電池などと比較しながら、学習曲線で将来の展望を予測し、
「新製品が普及するための5つの条件」などとも比較検討している。

結論として、乗り物の燃料や家庭での電力など、幅広い分野で、
燃料電池は大きな可能性をもっており、政府も利用を進めている。
車では、2010年に5万台、2020年には500万台の普及を目指している。
家庭でもコージェネレーション・システムが、企業開発されている。
太陽光発電燃料電池のハイブリッド装置まで開発されているのです。

原発がなければ生活できないとか、エネルギー資源確保のためには、
軍隊を海外に派遣してでも、企業活動を守らなければならないだとか、
およそ生産的とは思われない、破滅的な経済成長がもてはやされる現代。
それでも正常な神経をもつ科学者は、平和で豊かな社会を目指している。
この本は、そうした人間への信頼をあらためて感じさせてくれました。

最終章「水素エネルギー社会の到来」で、著者の槌屋さんは、
デンマーク工科大学ノルガーさんのエネルギー利用効率を紹介されます。
それは(1)「エネルギー機器効率」、(2)「社会システム効率」、
(3)「ライフスタイル効率」の三つの要素が不可欠との分析です。
それはすなわち(技術)と(政策)と(価値観)の変革なのでしょう。

「今ある技術だけでも、僕らは原発など必要としていない」とする、
田中優さんなどによる現状分析とも、同じところを見ているはずです。
そのためにこそ僕らは、自らのライフスタイルを改め、政策を改め、
新しい技術を積極的に活かす生活を作る必要があるのだと理解しました。

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