放射性廃棄物地層処分シンポジウム

主催したのが、経済産業省資源エネルギー庁と、
中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局、北陸新聞社。
そして後援が、原子力発電環境整備機構(NUMO)と、
日本海原子力研究開発機構(JAEA)、電気事業連合会
この物々しい名前が並んで、シンポジウムが行われました。

しかしシンポジウムと言っても、一般参加者に発言の機会はなく、
説明を聞けば聞くほど疑問が湧くのを黙って腹立たしく聞くだけです。
お役所のお手盛り行事は、いつもこの一方通行でしかないですね。
市民の質問さえ、自分たちで都合のいいように作りたいわけだから、
参加者から意見を聞くつもりなど最初から無いのでしょう。

そのように達観して聞けば、いくらかは学ぶべき説明もありました。
出来てしまった廃棄物は、いづれ処理しなければいけなくて、
その方法は、地層処分以外に安全で経済性に見合うものがないこと。
そんなことはわかっていたから、原子力発電に反対してきたのに、
あんたも電気を使ったのだから共同責任だとは、恐れ入ったよ!

なんなら今からでも遅くないから、そんな危険な原発は止めて欲しい。
いくら止めて欲しいと言っても止めないで、廃棄物は共同責任だと?
聞いているうちにだんだん腹が立ってくる、ひどい説明会でした。
それでもこの集まりを、いちおうシンポジュウムにするために、
第2部では市民を代表する人たちも出席されていました。

射水市長の分家静男さん、消費生活アドバイザーの吉田秀子さん、
富山青年会議所理事長の橋本淳さん、この3人が市民代表で、
その他4人は、資源エネルギー庁放射性廃棄物等対策室長の吉野恭司さん、
最初から御用学者的発想の北海道大学大学院工学研究科助教授の佐藤努さん、
今回の広報活動を進める原子力発電環境整備機構立地広報部長の二口政信さん、
さらには日本原子力研究開発機構地層処分研究開発部門副部門長の石川博久さん、

それにしてもお役所関連の人はどうしてこんなに肩書きが長いのか。
石川さんは原子力の技術を飛行機に例えて、エンジンが一基止まっても飛べる、
そのように安全性を考えていると説明されるけど、全然違うでしょう。
飛行機事故なら選択的に乗った人が事故に遭うだけなのに、放射能事故は、
既に今ある電力でさえ過剰だと考えて使わない人にまで、同じように被害が及ぶ。
一部の人だけが利益を受けて、みんなでリスクを負うところが問題なのですよ!

さらにもっとお馬鹿に思われたのが、北海道大学の佐藤努さんで、
いまどき石炭や石油の石化エネルギーと比べて原子力の優位を説明されても、
ほとんどの人は、第三の自然エネルギーに将来を期待しているのに、
なにを20年前みたいな説明をしているのかあきれるし、その上さらに、
原発のない富山県でも、使用電力の40%以上が原発のものだとおっしゃる。
だから僕らにも廃棄物処理の責任がある?バカを言ってもらっては困る。
だからこそ僕らは原発を止めてくれといっているのではないのか?

これだけ噛み合わない議論を聞かされて、説明したつもりになられては困る。
それはどうやら、市民側パネラーもみんな同じような気持ちだったようで、
企業利益を代表する市民としてと出席していた橋本さんでさえ、
広報は自己満足では困る、これで理解されたとは思わないで欲しいと発言。
分家さんは不快な面もちで、原子力発電の安全性に対する疑問を言われたし、
吉田さんなどは、日本のエネルギー政策の行方にさえ疑問があると発言された。

資源エネルギー庁の吉野さんは、こうした疑問には一切答えずに、
ひたすら地層処分の安全性と市民の合意をくり返されるばかりの状態でした。
なるほど、うっかり一般参加者からの質問を受けても答えられない、
根本的な疑問を抜きにして、ひたすら地層処分の合意を取りたい、
そのためのシンポジュウムだったことがよくわかりました。

同時に今回のシンポジウムに参加して見えてきたのは、
たぶん政府の役人でさえ、どうしていいかわからずに政策を立てている。
理論上絶対起きないと説明し続けた原発事故が頻発する中で、
それに答えられないから、こんどは既成事実を作って同意を求める。
この国の恥ずかしい実体がそのまま見えるシンポジウムでした。