もう一つの公共事業

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竹富町西表島、西部よりもさらに西の船浮き集落には、
歩いて15分ほどの裏手に美しいビーチがあります。
今日の写真は、そのビーチへ続く町営の道路です。

鬱蒼と樹が茂った亜熱帯の密林を抜けるこの道路は、
公道にもかかわらず、まったく舗装がされていません。
地元の人に話を聞くと、仕事のない老人雇用のために、
半年に一度、地元の人が草刈りや道の整備をするそうです。
全部手作業で、業者や機械はまったく使わないとのこと。

もしもこの道路を舗装してしまえば、便利で楽だとしても、
せっかくの事業費は、余所の事業者にしか渡りませんし、
地元住民には修理や管理さえも、思うように出来ないでしょう。
それをあえて未舗装で固めただけの道路にすることで、
(1)生態系にやさしく、(2)自分たちで管理できて、
(3)ささやかながら公共事業費も住民に落ちるのです。

高齢化が進んで、これと言って仕事もない住民にとって、
こうして自分が地域づくりの担い手になっている事の自負は、
合理化や経済効果では計り知れない、充実感をもたらしている。
ここは確かに国定公園の中だから特別かも知れないけど、
コンクリートで固めるだけが公共事業ではないことを、
実例として示していることは間違いないのです。

先日「女性が考える道・まちづくりフォーラム」に参加したとき、
多くの女性が望んでいるのは、大規模開発などではなく、
今住んでいる地域が安心して暮らせる町になることでした。
車に頼って遠くへ行かなくても、徒歩と自転車で生活できる、
子供もお年寄りも安心して集えるまちづくりを望んでいるのです。
それなら、借金してまで商業開発するよりも出来ることがある。

住民が自主的に自分たちの暮らしを住み良いものにする活動を、
行政はしっかりサポートして手助けすることが大切です。
相変わらずむかしながらの公共事業の立案ばかりしているようでは、
これからの行政としては、無能と言われるかも知れません。
住民の住民による住民のための政治が、地方政治の自立です。