増え続けるイスラム教徒!

このところ高岡で多くの講演や講習を受けていますが、
その中にはイスラム教に関するものがいくつかありました。
またNHKの特集番組などでも、イスラムが取り上げられています。
少し前までは、イスラムや中近東は遠い世界でしかなかったのに、
自衛隊イラクに派兵されてから、旧に身近になったようです。
そこで、富山国際大学公開講座での岡倉教授の話をもとに、
イスラムの基本について、まとめておきましょう。

まずイスラム教とは何かと言えば、
唯一の神(アッラー)に絶対服従することであり、
二人以上の信者の前で、三回以上信仰を唱えれば信者になれる。
そして6信(神、天使、教典、預言者、週末の日、予定)を受け入れ、
日常生活で5行(信仰告白、拝礼、喜捨、断食、巡礼)を実践する。
これをもってイスラム教と呼ぶのですが、イスラムの語源は、
挨拶言葉でもあるサラームと同じ「平和」を意味しています。
さらに預言者ムハンマドはイエスやモーゼと同じ神の預言者なので、
西欧社会の一神教はすべて同じ神に通じる兄弟なのかもしれません。

次に現在のイスラム教徒を見た場合に、
シーア派スンナ派の対立があると言われますが、これは
かつて少数派であるサダム・フセインが独裁政治をしていたために、
フセイン政権崩壊後にスンナ派の復讐が始まったイラクの特殊事情で、
世界中でシーア派スンニ派が対立しているわけではないようです。
シーア派とはムハンマド亡き後に登場した指導者アリーを信奉する派で、
スンナ派とは特定の人を崇めずに、コーラン預言者の行動を重視する。
こうした違いこそあれ、両派のどちらが暴力的と言うこともない。
現にテロリストの顔ぶれも、シーア、スンナどちらにもいるようです。

さて問題はイスラエルパレスチナの関係で、
先日もイスラエル軍の兵士二人がハマスの一派ヒズボラの捕虜になって、
その捕虜を取り戻そうと試みたイスラエルの軍事行動が失敗したと、
世界中のニュースとなって情報が飛び交っていたのです。
ヒズボラは国家ではないので、国と国との交渉が出来ません。
軍事力で圧倒的に勝っているイスラエルパレスチナへ侵攻しても、
捕虜を救出するどころか、居場所も見つけられなかったのです。
こうなると、多くのパレスチナ人捕虜との交換を受け入れるしかない。
今までの欧米的やり方では解決できない問題が出てきているのです。

さらに考えなければならないのは、イスラム教徒の増加です。
世界の総人口でイスラム教徒の割合を見た場合に、
2000年の統計では19%だったものが、今は20%を越えており、
さらに増え続けて、2025年には30%に達すると予測されています。
なぜこのようにイスラム教徒が増え続けるのかの見解として、
「家族の繋がりで親から子へと信仰を伝えるから増える」
「アフリカなどの人口が多い場所で布教活動が盛んだから」
などの指摘も、間違ってはいないのでしょうけど、
「格差が広がる社会の中でイスラムは神の前での平等に忠実だから」
と言うのが、欧米でイスラム教徒が増えている理由だと感じました。

日本ではまだ仏教の砦があるので事情は違いますけど、
これからますます貧富の格差社会が広まっていった場合に、
仏教には貧しい人たちを救う思想も機能もないと受け止められたら、
神の下での平等を説くイスラム教が広まる余地は十分にありそうです。
それでは日本は、これから何を国の価値観として提示できるのか?
欧米と同じグローバル経済を押し進めるだけであれば、
いずれは同じように格差社会、差別社会が進行していくでしょう。
欧米でなぜイスラム教徒が増えるのかを考えることで、
これからの日本が目指すべき方向も見えるような気がします。