農薬と自殺者

先日富山県の広報番組で「心の健康を考えよう」を見ていたら、
富山県は、日本の都道府県の中でも5番目に自殺者が多いと知りました。
持ち家率や資産、収入の多さでは決して貧しい県ではないはずですし、
海、山、里の自然環境も豊かで、文化的にも豊かだと思われるのに、
どうして自殺率が高いのかは、どうにも不思議に思われたものです。
番組ではその対策として、メンタルケアを充実させるために、
ストレスドックや心の健康センターの紹介をしていましたけど、
自殺者が多い原因や、そうした環境の改善に関しては何も言いません。
いつものように、問題を大きくしてから対応して見せたいのでしょうか。

皮肉はさておいて、昨夜FNSドキュメンタリー大賞を見ていたら、
「自殺大国に潜む影」と題して、気になる情報を紹介していました。
1998年以降、毎年3万人を越える自殺者は交通事故死の4倍になり、
しかもこの自殺者は、都会よりも農村地帯に多いというのです。
一般に孤独と思われがちな一人暮らしよりも、家族と暮らしていて、
自分が家族に迷惑を掛けたくないと思って自殺する人が多いのも、
農村地帯に特有の、自殺の特徴になっているようですね。
富山県内の実情を見ていても、仕事が出来ない人はさげすまれる。
人間を生産性でしか見なくなった悲しい現実がそこにはあります。

さてこのあたりまでは、まだなんとなく予測していたことですが、
驚いたのはその後で、農村地帯に自殺者が多い理由として、
あるいは農村地帯に自殺に繋がる「うつ病」傾向が多い理由として、
有機リン系農薬の慢性中毒が考えられると指摘されていたのです。
この農薬飛沫を浴びることによる慢性中毒は日本中にあって、
日本における単位面積あたりの農薬使用量が世界一だと聞けば、
そりゃあ中毒も起きるだろうと納得しないわけには行きません。
たしかに田植えが終わった初夏の農村地帯では農薬散布が盛んで、
涼を取るために開け放した民家の中にも否応なく流れてきます。
それはもう、かなり遠方でも、風下であれば気分が悪くなるほどです。

人間の生活や健康な命よりも生産性が求められるようになって、
その顕著な例が、疑うことを知らない農村地帯に蔓延したのであれば、
自殺は個人の問題ではなく、あきらかに政治的な社会問題です。
生産的でないものを追いつめる価値観が、大量の農薬を使わせ、
同時に効率よく働けなくなった人たちを自責の念へと追い込んで、
心身の両面から弱者を自殺へと追い込んでいるのが実情だったのです。
今や日本の田舎は、半世紀前の牧歌的なものではなくなっており、
すでにトンボや蝶といった昆虫もほとんど住めない環境になっていて、
さらには人間も自殺に追い込む環境が出来上がっているのかもしれません。

さあ、もっと皆さん、自然農に目を向けてみませんか?
あらためて、そんなことを思ってしまいました。