「ことば」

チョムスキー言語学に触発されて、
「ことば」そのものに関心を持っていたら、
そのものズバリ「ことば」って本を見つけました。
内容に言語学の歴史もまとめられていましたので、
思わず買って読んでみました。

第一章 言葉から何を学ぶか 加賀野井秀一 現代思想言語学
第二章 言語の謎に挑む脳科学 酒井邦嘉 言語脳科学・認知学
第三章 からだとしてのことば 竹内敏晴 演劇創造・人間関係
第四章 社会は「言語ゲーム」でできている 橋爪大三郎 社会学
そして第五章に、言葉をさらに学ぶために、として、
言葉の歴史や言語学者の紹介とブックガイドがついています。

たしかに日本の教育の中でもっとも大切に思われる国語が、
義務教育でさえ時間が削られて、今や日本語は大荒れになっており、
新しい教科書として出版されたのは意味があるでしょう。
「ことば」の入門書として必要な知識は一通り載っているし、
言葉とは何かを学ぶことが人間とは何かを学ぶことだとよくわかる。
人間にとって言葉がなければ「何もない」に等しいのだと知らされる。

僕はこの中で竹内氏が書いていたメルロ・ポンティの話、
共通認識による情報伝達の機能と詩的に生まれ出るまことのことばの他に、
呼びかけとしての機能が重要なのではないかとする説にも納得する。
僕はメルロ・ポンティの本は過去にも何冊か読んでいるけど、
実は今までそうしたことの重要性までは気付いていなかった。
現代は情報ばかりが氾濫して、自分の中から出てきた言葉を使う人が少ない、
そう指摘されると、現代教育にいかに弊害が多いかを再確認させられる。

ともあれ、言語学や「ことば」を知る上で、
この本が汎用的な入門書になることは間違いない。