井筒監督の「映画と人生」

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高岡市民教養セミナーってことで、
井筒和幸監督の話を聞きに行ってきた。
彼の監督作品はあまり見ていないし、
過去の作品は特別見たくもないけど、
「パッチギ」は間違いなくいい映画だった。
その監督の話は聞いてみたかった。

最初に映画を作ったときのエピソードは、
それなりに面白かったけど僕は笑えなくて、
やっぱりパッチギにまつわる話がよかった!
この映画は「イムジン河」の歌が鍵だけど、
実際にこの映画を作ろうと思ったきっかけも、
子供の頃に聞いたこの歌の印象かららしい。

中学三年の冬にフォーククルセダーズが歌い、
レコードになる前に大ヒットしたこの歌は、
3月予定だったレコードの発売が中止になり、
まもなく放送禁止の歌になってしまう。
実は加藤和彦は平和を願う歌詞で歌ったけど、
元々は北朝鮮の歌の歌詞を変えていたために、
朝鮮総連から猛反発が起きて、しかも、
韓国からは北の歌だからと反発を受けた。
これに恐れをなした東芝が販売中止に踏み切り、
放送業界も追従して放送禁止にしたものらしい。

田舎育ちの僕らはそんなことは知らなかった。
ただあの美しいメロディーの曲は覚えていて、
自分でも歌えてしまったのが不思議だった。
その放送禁止を受けて加藤和彦の作った曲が、
大ヒット曲「悲しくてやりきれない」だったのだ。
そうした背景があって「パッチギ」は生まれた。

なるほどそんな背景があったからこそ、
あの映画には奥深い陰影が生まれたのだろう。
それまでの井筒監督の作品はつまらなくても、
こうした本物の映画が作れたのだから、
それまでの駄作映画も準備だったと思えば、
彼もいい人生を生きているんだなあと感心した。