「イワンの馬鹿」

沖縄へ出発する前に図書館で借りたまま、
持って行くには大きくて重いと判断したために、
家のテーブルの上に置きっぱにしていた本、
北御門二郎さん翻訳の「イワンの馬鹿」を読みました。
子供の頃に読んだことがあるはずなのに、
あらためて新鮮に読めたのが面白かったですね。

ロシア民話風のお話による短編集なんだけど、
トルストイがすでに名声を得ていた晩年の作品で、
キリスト教の目指すものが何かをうまく書いている。
僕はどちらかと言えば仏教の方が好きだけど、
人間理解としてはとてもよく納得できる感じでした。
基本的に軍隊とお金を不幸の要因として書いている。

現代では戦争や軍隊を否定する人は多いけど、
お金に関してはほとんど誰も否定しなくなっていて、
それがいかに恐ろしいことか想像もしない社会になっている。
だけどお金が人を苦しめて不幸にする現実は変わっていない。
軍隊の内部にいると軍隊の何が行けないのかわからないように、
どっぷりお金に浸かった生活の中でお金の恐ろしさはわからない。
このお金の問題を棚上げしてどんな社会問題も解決しない。

実のところ様々な平和活動や社会活動が閉塞するのは、
基本的にそれらが経済活動の誤謬に陥っているからで、
軍隊によって平和は作られないのと同じように、
お金によって作られる幸せなども幻想なのだと思う。
実生活では僕だってお金なしでは生きられないのだけど、
大切なのはどこを目指すかの生き方であり方向性であるに違いない。