一時間の苦悶

大玉生の山中で古い友人に会い、
薫風の人たちとも一緒になって食事をしました。
昼は薪を使ってのバーベキューで、
夜は子どもたちが作ったカレーでした。
それはいいのだけど、体調が悪かった。

昼のバーベキューで焼き物をしながら、
ビールを1.5リットルとチューハイを0.5リットル、
これだけ飲んでゴロゴロと寝ていたら体が冷えて、
実は夕食時には最初から体調が悪かったのです。
だけどまあ、食事をすれば体調も良くなるかなと、
普通にカレーを食べてしまったんだけど、
このカレーのルーがちゃんと煮込まれていなかった。

体が冷えて体調が悪いところに煮足りないカレーで、
食べている途中から少しお腹が物憂くなったけど、
いつものように勢いで全部食べ終わり、
ソファーに移動してしばらくは休んでいた。
だけど何だかいつもと違ってすっきりしない。
明日は何かと用もあるので、ここで家をおいとまする。
時計を見るとちょうど9時頃だったと思う。

大玉生から山を下って八尾の町中までが15分、
八尾の町を抜けて国道359までが15分、
国道を突っ走って安川の交差点までが15分、
そして井波の家までが15分の合計1時間。
そう計算して、はやく家に帰った休もうと考えた。
そして最初は消化不良くらい問題ないと思っていたのに、
これがとんでもない苦悶の一時間になっていく。

まず曲がりくねった山道を運転している間に、
単なる消化不良ではない体調の悪さを覚え始める。
短パンから出ている足が寒く感じて窓を閉めて走る。
いくら山中でも、この寒さの感じ方がすでにおかしい。
そうこうする内にお腹が苦しくなってきて、
なにやら気分まで悪くなってしまった。
昼に飲み過ぎた後で体を冷やしたのがいけなかったか?

なんとか山を下りて八尾の町に入ったところで、
せめてお腹の調子を少しでも回復させようと思い、
公衆トイレに入って大便をすませた。
これでいくらかお腹の調子が楽になるはずだった。
そのまま駐車場で休むことも考えたけど、
万が一風邪を引いたりしていても困るので、
何とか残り45分間を頑張ろうと車を走らせる。
ところが体調は益々悪く、全身にイヤな汗をかき始めた。

国道に辿り着く前の直線道路でどうにも気分が悪くなり、
道脇に車を停めて脇道を少し奥に歩いたところで、
お腹を押さえてしゃがみ込んだら胃の中のものを吐いた。
硝化されないままのカレーの具が出てきた。
鼻の穴まで入った異物をティッシュでかんでうがいする。
それでもまだすっきりとはしなかったけど、
はやく布団にくるまって寝たい気持ちが強くなり、
額に脂汗をかきながら再び車の運転を続ける。

やっと国道に出て安川へ向かう途中は、
何度が意識が薄れそうで自分を叱咤激励し続ける。
この359号線は普段から高速走行のレーンなので、
万が一意識を失って事故っても人に迷惑を掛けないよう、
なるべく他の車に近付かないように走り続けた。
これだけ緊張して走るのは初めてかもしれない。
最後はまみあなで休ませてもらうことも考えたけど、
ここまで来れば残りは15分と思って頑張る。

ところが安川の交差点を左に曲がって間もなく、
堪えに堪えて運転している僕の胃袋が痙攣して、
口の中に未消化のカレーがあふれ出てきた。
それを吹き出さないように口の中に溜めたまま、
急いで車を道脇に停めて外に出て吐き出した。
L.A.で口中に溜まった血を吐き出した記憶がよみがえる。
どちらの場合も車の中に吐かなかったのはエライ!

もうダメかと思いながらも、残りはあと10分の道のり、
全身にイヤな汗をかきながら寒くて窓も開けられず、
必死な形相でハンドルを握り続けて家まで帰った。
家の前に車を停めて車庫入れする気力もなく、
まっすぐトイレに駆け込んで吐き足りない分を吐き、
口の中を濯いでから水を一杯飲んで横になった。
そのまんまぐっすりと朝まで眠り込んだ。