「ALWAYS三丁目の夕日」

試写会の券が手に入ったので見てきた。
原作が西岸良平の「三丁目の夕日」で、
ビックコミックに今も連載されるロングヒット作品。
監督が日本屈指のVFX作家である山崎貴と知れば、
それだけでも興味深くて見てみたかった。

期待はみごとに実現して僕のハートを揺さぶった。
なにしろ最初のシーンから目が釘付けになって、
ワクワクしたまま最後まで見通してしまったのだ。

僕はけっしてノスタルジックなものが好きではない。
むしろ近未来的なものの方に関心が強くて、
過去を振り返るのはあまり好きじゃない人間だ。
ところが昭和33年を舞台にしたこの映画は、
単に過去を懐かしがっているわけではない、
人間の幸せな生活がどんなものであるか、
もののみごとに映像化して見せてくれている。

原作のコミックもたしかにそうだったし、
あの独特な西岸良平世界がこんな映画にできるとは、
あらためて映画の素晴らしさを再確認した。
物語の内容をここで説明したいとは思わない。
特別大きなストーリーがあるわけでもなく、
ささやかな町内での出来事が淡々と描かれる。
そこに人間の顔と個性がしっかりとあって、
見るものは自分がそこにいるような感覚になるのだ。

ところどころ劇画チックにデフォルメされた演出も、
目障りどころか拍手したい気持ちにさえなる。
演出も心憎いのだけど出演者の演技がまたすばらしい。
日本映画ではありがちなわざとらしい臭さが消えて、
近所の友達を見ているような気がしてくる。
共に生きることの素晴らしさが伝わってくるのだ。

歴史に残るようなヒーローでもヒロインでもなく、
壮大な物語でもなければ感動巨編でもない、
だけどこの映画を作り出したスタッフの力はすごい!
どこかでほろりとさせる映画は数多いけど、
最初から最後までこれだけ泣いた映画は珍しい。
音楽を含めた音への配慮も手抜かりなく、
心に勇気と暖かさが残る映画だった。