お金の次に来るもの!

去年自主上映した「アレクセイと泉」を、
なんで今頃映画のコーナーで紹介したかと言えば、
そのとき本橋監督と話した内容を思い出したからだ。

上映会が終わって、監督を囲んでの話し会をしたとき、
監督は今の社会がお金経済に走っていることを批判して、
いずれ新しい価値観による社会が実現されると示唆された。
そこで僕は、その新しい価値観とは何かと質問したら、
監督自身もまだ明確には言えないとしながらも、
井上陽水の「傘がない」の歌をヒントに話をされた。
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 テレビではいろんな社会問題を伝えているけど
 僕らの本当の問題はそんなところにはないんだ
 問題なのは今彼女に会いに行きたいのに傘がない
 そうしたほんのちょっとしたことが大切なんだ
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簡単に言ってしまえば、こんな内容の歌詞だったろう。
この歌が発表された当時、不思議な歌詞に思えた。
その意味が時を経るに従ってわかってくると、
最後には本橋監督と同じように大切な内容に気付かされる。

現代社会のグローバル拡大経済が自然や文化を破壊して、
人々の生活がいくら働いても不安になる構造の中で、
僕らにとって本当に大切なものは案外小さいものだってこと、
雨の中でも彼女に会いに行ける傘さえあればいいってこと。
経済拡大よりも人と人の繋がりを大切にして生きていく、
そうした生き方に、新しい価値観は潜んでいるってことだろう。

もちろん、お金の次に来る価値観を模索するとしても、
突然お金の価値が無くなってしまうわけではない。
家の価値を何よりも大切にした文化が崩れた後も、
長く家は人々の生活基盤であったように、
お金はまだとうぶんの間、重要な要素には違いない。
それでも新しい時代を築く新しい価値観を模索するには、
雨にさしかける傘の「規模」が大切なのだ。