「アレクセイと泉」

1986年4月26日、
チェルノブイリで起こった原発事故の実情は、
映画「ナージャの村」で多くの人に知られました。
発表当時はマスコミでも広く取り上げられ、
美しい映像と相まって人々の評判にもなりました。

ところがその続編として作られたこの映画、
「アレクセイと泉」に関しては、マスコミでは
あまり話題にもならなかったように思います。
http://www.ne.jp/asahi/polepole/times/sosna/alec/
だけどこの映画には前作以上のテーマがある。

映画には ~百年の水の物語~ と副題が付いており、
原発事故のあったベラルーシで撮った映像が、
単なる原発事故のその後を見せるのではない、
それをきっかけに人間生活とは何かと問い掛けている
人間の幸せとは何かを見るものに考えさせてくれる。
そうした貴重な内容を持つ映画に仕上がっていました。

放射能による退去で多くの村人が去り、
55人の老人と一人の若者アレクセイだけが残った。
そんな村に湧き出る泉になぜか放射能は検出されない。
この村の生活は車も商店もない質素なもので、
人々は自律的に自給自足をしながら暮らしている。
それなのにここで暮らす人々は幸せそうなんです。

若者達が村を出ていったさみしさは隠せないけど、
美しい自然に囲まれた静かな生活には満足している。
もともと写真家だった本橋成一監督の映像は、
まるで連続する絵画を見るように美しい。
人間生活にとっての豊かさとは何かが、
何も語らずに問い掛けられていたのです。

この映画は新しい時代がどこへ向かうかの、
美しい映像と共に啓示しているように感じました。
全編を通してあまりにも静かで美しい映画なので、
見ながらゆっくり眠れるのも幸せです♪