「美女と野獣」

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最初に物語が書かれたのは、1740年と言いますから、
すでに280年前に書かれたと思えば、感慨深いものがあります。
それ以来いくつかの書き直しがあって、1910年代には、
ラヴェル組曲になって、オペラ座でバレエ公演もされています。
そしてミュージカルとなり、コクトー監督の映画になって、
1991年には、ディズニーのアニメーション映画になっている。

その後もオーストラリア、フランスで映画になったあと、
2017年には、ついにディズニーの実写版が発表されたのです。
あまりにも有名な題材ですし、エマ・ワトソンがベル役で、
ディズニーが大々的に宣伝した映画ですから、ヒットは間違いない。
そんな世界的にも有名な映画ですが、ロードショーは見に行けず、
今回ようやくレンタルで見たのですが、確かに素晴らしかった。

物語は誰でも知っているので、ここでは触れませんけど、
何が素晴らしいかといって、実写とCGの切れ目ない融合です。
以前には不可能と思われる、ティーカップやその仲間たちはもちろん、
野獣の映像やオオカミなども、どこまでが本物か分からない。
建物も森の様子も、あらゆる場面が妥協なく作られており、
それを可能にしたのが、最新のSFXなどの技術なのでしょう。

どこまでが実写で、どこからがCGか分からないと言うことで、
まさしく夢と現実の境目をなくして、一つの作品が出来上がっている。
僕らはそんな作品世界の中に、どっぷりと浸かることができるので、
日本文化とはまるで違う世界の話しに、違和感なく没入できる。
そして300年近い長きにわたって、愛され続けたフランスの物語が、
その文化を分かるはずのない我々にまで、涙を誘ってくるのです。

愛とは何か、真実とは何か、誠実とは何か、友情を問い、
夫婦の情を問い、親子の愛を問う、繊細にしてかつ壮大な物語。
しかも歴史的な意味もあるのか、全編にミュージカル的な歌があり、
それでいて現実離れしていないのが、この映画の魅力の一つでしょう。
まるでおとぎ話なのに、大人がはらはらドキドキして見てしまい、
現実離れしているのに、個々の登場者は身近な感じさえするのです・

美女は美女として、野獣は野獣として魅力的なのですが、
それだけではない登場人物の多くが、どこかに魅力を秘めている。
自分を失わせている魔法が溶けさえすれば、魅力的な人たちが、
実は魔法によって、歪な人間になっていると言いたいのかも知れない。
美女と野獣のハートフルなやりとりも、つい応援したくなり、
最後には思わず涙を流してしまう、珠玉の名作品を味わいました。