馬籠宿~寝覚ノ床
10時前に宿を出て、まずは馬籠宿へ向かいました。
カーナビを使っていると、自分がどこを走っているのか、
わからないまま目的地に着くのが、なんとも奇妙です。
周囲の風景が移り変わるのを、ゆっくり見たくて、
遠出をするときも、なるべく高速は使わないのですが、
カーナビで走ると、自分がどこにいるのかがわかりません。
それでもちゃんと、目的地に着くのはありがたいけど、
運転中はカーナビに、使われているような感じもしてしまう。
巨大なシステム化した現代社会では、人間個人の自主性なんて、
見失いがちですが、まったくお任せにしたいとは思えない。
何もかもシステムに合わせてしまえば、最終的には、
自分なんていなくいてもいい、虚しさを感じるでしょう。
そんなことを考えている内にも、車は馬籠宿に着いて、
僕らは降り続く小雨の中を、ぶらぶら歩いて見て回ります。
あたりの様子や会話に注意していると、日本人は少ないようで、
欧米からアジアの各国まで、ともかく多種多様な人種がいる。
中にはニューヨークタイムズに紹介された、茶屋もあって、
僕らもそこで一休みして、茶畑を眺めながら珈琲を飲みました。
ずっと小雨が降っていましたが、有り難いことに姫は元気で、
放っておくと傘も差さずに、石畳の坂道を走り回っていました。
妻はもともと古い街が好きなので、のんびり店を見て回り、
僕は妻と姫がはぐれないように、見守り隊のようなものでした。
あまりにはしゃぎすぎて、姫は馬籠宿だけで疲れてしまい、
次の妻籠宿に着いた頃には、すっかり眠っていたのです。
車に残していこうとは思えなくて、起こすのもかわいそうだし、
結局一番楽しみにしていた妻が見て回り、僕は姫とお留守番です。
ところが1時間ばかりして戻った妻は、八百屋でつかまって、
半時間ほどは、八百屋主人の愚痴を聞いてきたのには驚きました。
店を開くのに観光協会にお金を納めるのが、納得いかないし、
子どもたちが帰ってこないのも、面白くないのだとか。
そんな聞いてきた話を、一生懸命に伝える妻を見ていると、
なるほど八百屋の主人の話も、きっと熱心に聞いたのだとわかる。
すぐに相手に親身になるのも妻なら、いろんな話を聞き過ぎて、
けっきょく何が出来るわけでもないのが、僕の妻です。
あまり合理的でないので、僕と一緒にいてもなんとかなる、
有り難い妻ですが、時々一人で疲れているのも気になります。
さてその後は上松の寝覚ノ床へ行ったのですが、この場所は、
亀を助けた浦島太郎が、玉手箱を開けた場所だとされています。
なんでこんな山の中に、浦島太郎の伝説があるのか不思議ですが、
ともかく見てみようと思ったら、奇妙なことがありました。
車を停めて公園を歩いて降りるのですが、伝説の場所に行こうとして、
遊歩道らしき場所を降りていったら、男の人に呼び止められました。
川には近づかない方が良い、とだけ言って注意してくれたのです。
言われてみれば昨日から雨が続いて、川は増水しているし、
降り続く小雨で、河原の石は滑りやすくなっているはずです。
そこで記念の写真だけ撮って、礼を言おうと思って振り向いたら、
さっきの男性がどこにもいないし、遊歩道だけが見えている。
どこから現れてどこへ消えたのか、どこにも見えなかったのです。
その後は亀を祀った神社まで歩いて、少し休みましたが、
「そば寿司」が食べられる店がある、と知って行ってみました。
そのお店に飾ってあったのが、写真の亀の剥製ですが、
これだけ大きなものは、海好きの僕にしても見たことがない。
浦島太郎と直接関係はないにしても、これだけ大きければ、
人を乗せて竜宮城へ行くことも、可能かも・・・・