藤城清治 光よろこびメルヘン展
僕が子どものころから、すでに活躍されていた、
影絵の第一人者、藤城清治さんの作品展に行きました。
「詩とメルヘン」や、「暮しの手帖」などで、
表紙絵にもなっていましたから、多くの人に親しみがある。
そのために来場者も多くて、土曜日の午後ではありましたが、
会場はぞろぞろと歩きにくいほどの、盛況でした。
藤城さんは、今はもう何歳になるのでしょうか、
92歳に制作された大作が、会場の中央にありましたが、
メッセージ性も強く、彼の今の集大成と書いてありました。
それは戦争に対する無念であり、彼の人生における、
まだ若かりし日に失った友を思う、祈りのオブジェです。
しかもそれが暗くない、明るい光の中で描かれて、
並木の桜と空を舞うトンボが、印象的な作品でした。
彼は影絵以外にも、残されている作品は多いのですが、
暗い館内で、バックライトを受けて浮き上がる影絵作品は、
影と言うよりは、光のオブジェとして美しい。
多くの作品は童話を下地にして、描かれており、
展示作品には、元の童話そのものも付されていました。
だから4歳前の姫でも、面白いのではないかと思いましたが・・・
姫は最初薄暗い展示場をいやがり、入場してすぐに、
早く帰ろうと言い出す始末で、少し手こずってしまいます。
館内で小さな子どもは、手を繋いでくださいと注意されて、
僕が強引に手を繋いで引っ張ると、姫はなおさら抵抗します。
どうするか困っていると、後ろから妻がやってきて、
姫は妻のところへ行って、ぐずっていたのですが、
妻が物語を読み始めると、やがて聞き入って見ていました。
姫の様子を見ていると、これはいつものことですが、
僕と妻のどちらかが怒ると、姫は意地でも引き下がらない。
この強情さは、誰に似たのかわかりませんが(^_^;)、
それでも納め方は知っていて、妻とのけんかなら僕のところへ、
僕とのけんかなら妻のところへ、すり寄っていくのです。
徹底的に対峙しないのは、良いことだと思っています。
話しはずれましたが、藤城清治の作品を見ていると、
作品そのものもそうですが、作者の人柄にも惹かれていく。
宮沢賢治の作品も、その多くを影絵作品にしていますが、
「すべての人が幸せにならなければ、誰も幸せになれない」
とする賢治の心は、僕らにもよく通じるものです。
そんな心が作品になって、僕らの目に届けられるから、
光のオブジェは命を持って、僕らの心を打つのでしょう。