凄まじい井波風

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毎年春になると、井波地方には凄まじい南風が吹きます。
別名“いなみ風”と呼ばれるもので、日本海が低気圧になって、
南から北に風が吹くようになると、標高800mの八乙女山から、
吹きおろす風が、「おろし効果」で強風になるのです。
風速20mくらいになることも、珍しくないようですが、
今もその井波風が吹いて、朝の大空が唸り音を上げています。

この風はフェーン現象を伴うので、乾燥した風であり、
昔から井波では、この風が吹くと火を使わない習いがありました。
過去に何度か大火の歴史があるので、過ちを繰り返さないために、
先人が戒めとして、井波風の日は火を使わないのでしょう。
だけど現代では、そうした習わしも忘れられたようで、
多くの家では、普段と同じように火を使っていると思います。

我が家は町中にあって、両側に家が建ち並んでいますから、
風速30mくらいになっても、直接の被害はなさそうですが、
物干し台が隣の家に落ちたり、庭木が折れたりすることはあります。
さらにこうした風が吹いた後は、道路に木が倒れていたり、
農作業の道具が引っかかっていたりするので、注意が必要です。
子どもの頃は、風に乗って飛ぶのが好きでしたが・・・

古くなった我が家は、この凄まじい強風で揺れ動きますから、
これが両側に何もない、田んぼの中の家だったりすれば、
間違いなくどこか壊れて、大きな被害が出るでしょう。
今も風は唸り声をまき散らし、家はぎしぎしと揺れていますし、
ときおり聞こえる消防車の鐘が、注意を促しているようです。
5~6時間から、長い時は一日吹き続ける事もあります。

こんな厄介な風ですが、この風のおかげで良い米が採れて、
井波風が吹き抜ける砺波地方は、良質の種田になっています。
いわゆる種籾の産地として、全国に知れ渡っているのですから、
これも感謝して、大切にしていくべき恵みだと思います。
とは言え、今も囂々と吹き渡る天の轟きを聞いていると、
自然の驚異というものに、あらためて身を伏す思いがするのです。

写真は、八乙女山山頂付近の風神堂で行われる、
“井波風”を鎮める神事「八乙女山風神堂祭典」の様子。