世界で一番幸福な国

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南砺市民大学のコースに、「緑の里講座」と言うのがあり、
今月から来年3月まで、全21の講義が2千円で受けられます。
開講時間が、おおむね平日の午後2時~3時半ですので、
普通の勤労者には参加しにくく、昨年度までは高齢者大学として、
主に仕事をリタイアした人たちが、参加されていたのでしょう。
しかし内容が豊富で、参加希望者が高齢者とは限らないので、
今年からは「緑の里講座」として、再出発したようです。

講師がすべて、南砺市近隣の在住者なのも魅力的なのですが、
その第1回目の講義が、ブータンの話だったので行ってきました。
ずっと高校の先生をされていた、浄教寺住職の高瀬顕正さんが、
ブータンを旅してこられた時の様子から、幸せを考えるお話しです。
今年の2月には、僕の親しい人もブータンに行っていますし、
国民総生産に替わる国民総幸福度の話は、何度も聞いていますから、
今回はまた違った視点から、何が話されるか楽しみでした。

もともと高校の英語の先生だったそうで、英語は話されますから、
現地でも少しは自由に、コミュニケーションが取れたかも知れません。
また楽しくお話しをされるのも、長年教壇に立たれた経験からで、
ツボも心得ておられる話しぶりが、聴講者の笑いを誘っていました。
そんな高瀬さんが、ツアー中にもっとも関心を持たれたのが、
現地の人の表情、特に子どもたちがどんな表情をするかってことで、
たくさん撮った写真を、スクリーンで紹介していただけました。

内閣府の統計によれば、日本で幸福だと思っている人は6割ほどで、
経済的には貧しいブータンでは、9割以上の人が幸福だと思っている。
経済が豊かになれば人は幸福になる、と信じて頑張った日本では、
世界が目を見張る経済成長を遂げたのに、毎年3万人の自殺者がいて、
自分を幸せだと思えない人が多いのは、いったいどうしてなのか?
高瀬さんはブータンの政策の中から、教育・医療の無料化と、
仏教理念による独自文化を大切にした政策に、その秘密を感じます。

現在のブータン国王は5代目ですが、その先代国王が立派な人で、
近隣の小さな国々が、インドや中国に翻弄されて国が消滅するのを見て、
国を維持するには、文化を大切に守り育てることが重要だと考える。
そのためには国民に民族衣装の着用を義務づけ、異文化の導入には慎重で、
観光客によるブータンの入国さえ、国が管理してガイドを付けます。
また国としての収入源を、税収よりも水力発電や国の事業で賄うことで、
小さな経済でも、国民は教育や医療の恩恵を十分に受けることが出来る。

こうしたことは、国体が王国のブータンだからこそできることで、
金融や財界支配による日本などでは、実現は難しいかも知れません。
収穫の時期が終われば、5日間にわたる祭りがあって政府も学校も休み、
仏教思想をあらわす仮面舞踏が、寺院や広場で延々と続くそうです。
なぜ仮面なのかと言えば、人間には克服できない魔物との闘いに、
人間を超えた存在が人間を守って戦う、そのための仮面なのだとか。
日本でお金の魔力と戦えるのは、果たしてどんな存在なのか?

高瀬さんはまた、仏教国としてのブータンが抱える問題として、
かの国では家族や一族の1人が僧侶になることを、誇りと考えるので、
子どもが6歳の頃から、仏門に入って生涯を過ごすことが珍しくないとし、
この子の人生を6歳で決めてしまっていいのかどうか、疑問視されます。
一度仏門にはいると帰俗できないのかどうか、考えてしまいますが、
僧侶として尊敬されながら、さらに高みを目指す生き方というものも、
僕らは忘れてしまっているだけで、悪いものではないのかも・・・