憲法前文のこころ

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小杉で憲法9条を学ぶ人たちの、「愛と平和市民塾」で、
富山国際大学の彼谷環さんが、「憲法前文のこころ」と題して、
話をされると知って、どんなお話か聞きに行ってきました。
彼谷さんはシャキットの勉強会でも、お話しいただいたことがあり、
最近の憲法を巡る話題に、何があるかも知りたかったのです。

特に今度の臨時国会では、急に憲法審査会が始動していたり、
違憲とされた一票の格差から、選挙制度を巡っていくつか動きがあり、
さらに復興増税の導入など、憲法条項に絡むことがいくつもある。
まず彼谷さんは、そのあたりの時事課題から憲法前文に入って、
前文にある条項が、僕らの日常生活に大きく絡むことを話されます。

憲法前文を改行で4つの項に分けて、順番に見ていくと、
第1項が一番長く、ここに「平和主義」「人権主義」「国民主権
の三代原則が明記されて、これを人類普遍の原理としています。
また第2項には、平和主義の具体的な理想を掲げると共に、
自衛隊イラク派遣裁判でも問題になった、平和的生存権があります。

そして第3項には、国際協調主義が明記されており、
第4項では、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力を挙げて
この崇高な理想と目的を達成することを誓う」と締めくくられている。
これは、本文条項が具体的な記述であるのに対して抽象的で、
現状云々よりは、理想を掲げることに目的があると言うことです。

それではこの前文条項は、裁判で権利として認められるのかどうか?
彼谷さんは、自衛隊イラク派遣訴訟名古屋高裁判決で、
前文にある平和的生存権を、国民の権利として認められたと言います。
これによって、今後の平和運動にも大きな力添えになるのかどうか、
最高裁判所判例からは期待薄ですが、一つの楔ではあるでしょう。

さて今回の彼谷さんの話の中で、一番興味深かったのは、
最近になって自衛隊の動きが活発になってきた、と言うことで、
北海道の北千歳では、90式の重装甲車が公道を走っている(写真)。
どうやら、3.11で名を挙げた?自衛隊が、存在感を示しながら、
戦車が公道を走って移動する仕組みを、確立したいらしいのです。

通常の公道は、重量戦闘車が走ると痛んでしまうので、
これを防止するために、キャタピラーにソフトカバーをして走り、
民間の船に乗せる手続きなども、実際に行ってみせることで、
いかに不便かを訴え、やがては緊急事態法に結びつかせたいらしい。
つまり緊急事態が宣言されれば、戦車はどこでも走り、船を徴用する。

こんな焦臭い話が、実は話以上に現実が先行しながら進んでいるから、
国会では今この時期に、憲法審査会が動き出したと言うことです。
同じような焦臭い話が、TPPを国会で審議するとき非公開だったのは、
実際に議論されたのが国防のことで、対中、対ソの方針がない以上、
アメリカの要求を蹴るわけには行かない、と言うことだったのかどうか・・・

またしても、国民不在の密室議論で国の重要課題が決まる、
いつまで経っても、この国には民主主義が根付かないようなのです。
そうして政治から関心を失った国民を、これ幸いと横目に見て、
政治利権屋たちは、また虎視眈々と利益を上げることだけ考える。
北欧のような熟議による民主主義は、夢のまた夢のような日本です。