奇跡を抱きしめて
一つ命として地上に生まれ、それぞれの奇跡を、
大切に生きた人たちが、蹂躙されて逃げ場もない。
何を食べるにも、水を飲むにも、息をするにも、
喜びの生が、不安の元になってしまったのだ。
何故こんなことになったのか、と考えても、
液晶パネルの良識ある人たちは、大丈夫だと言う。
安全基準を超えた、汚染した水も空気も大丈夫、
なんなら、安全基準を変えるから大丈夫だと。
東風に春を感じるどころか、不安が先立ち、
春雨を濡れて歩く風流は、危険な暴挙となった。
きれい所の美辞麗句で、甘い言葉に誘われて、
まんまと騙された人々が、悪魔の足元に垂れる。
これから、何をどうすれば許されるのかと、
焦燥に胸が塞がった人たちが、さまよい歩く。
心が焼けただれて、いつかの広島を繰り返して、
あてどなく「助けて!」とつぶやいて歩く。
すると、心の奥の深いところから一絞り、
やさしくて懐かしい、何者かの声が聞こえる。
おだやかな微笑みを見せて、手を差し伸べ、
奇跡の一つ命が、大切に抱きしめられる。
喜びはいつも 自然にあるのだから
惑わされずに 目覚めればいい