マネー資本主義

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以前から何度も取り上げている金融マネー経済の問題について、
今回はNHKが特集を組んだので、どんな内容か期待して見ました。
第一回は
「“暴走”はなぜ止められなかったのか ~アメリ投資銀行の興亡~」
と題して、ここ30年間に起きた金融債権の正体を暴きます。

とは言っても、金融債権など幻想でしかないことはわかっていたのに、
そこに乗ってひたすら金利益を求めた、人間狂気の正体こそ気になります。
番組では、債権を束ねて証券にする手口を編み出したソロモンブラザーズの、
当時会長だったグッドフレンドへのインタビューから、物語が始まります。

もともと経済の裏支えであった金融業界において、債権を商品化して売る!
という新しい商品販売の方法を確立することで、大幅に売上を伸ばし始める。
これに対し、当時副会長だったヘンリー・カウフマンは、異議を唱え、
金融業会は実体経済の信用を失うようなことをしてはならない!と主張する。
けれど役員全員が利益の高い方を求め、カウフマンは更迭されてしまう。

1970年代に、こうして始まった金融債権の売買は、自己増殖を始め、
やがて大手の証券会社は、こぞってこの手法を開発するようになると、
モルガンスタンレー、ゴールドマンサックス、メリルリンチが収益を伸ばす。
ここに実体経済の何倍もの名目金融商品が売買され、マネーだけが増殖する。
1990年代には、明らかにいずれ破綻するしかない状態だったのに、
この詐欺的行為は海外進出によって誤魔化され、世界中に金融危機を広げます。

そして最後にリーマンブラザーズが、サブプライムローンを商品化したことで、
誰の目にも明らかな無理が見え始めると、このローンの不良債権の顕在化で、
金融債券市場は、一気にその幻想を露呈し、縮小していくしかなかったのです。
およそ30年間に渡る愚かな狂騒の正体は、いったい何だったのか?

グッドフレンド元会長は、回想的なインタビューの中で、
「証券業界に学ぶべき人は一人もいなかった、そうした人は業界外にいた」
と言いますが、現実にはこの業界の人間がアメリカの財務長官になっている。
そして世界中にグローバル金融を広め、日本の経済界も一緒に踊ったのです。
ホリエモン村上ファンドが一世を風靡したのも、この流れの中のことで、
彼らには何ら先見性も独創もなく、思想性など無かったのでしょう。

それでは、この馬鹿げた30年は、どうして始まってしまったのでしょうか?
実は70年代初頭には、その後の世界経済を揺るがす大きな事件がありました。
一つはアメリカが金本位制を放棄した、いわゆるニクソンショックです。
これによって、ドルは無尽蔵に発行が可能になり、バブルの温床を築きます。
それまで貨幣の発行は、実体生産物や金との交換準備によって抑制され、
市場の都合で好き勝手に増やすことは出来なかったのを、撤廃したのです。

こうして不安定になった経済に、追い打ちを掛けたのがオイルショックで、
このあたりから貿易も金融も自由化の加速と共に、不安定要素を増やし、
かつては博打打ちと同じように蔑まれた証券屋が、持て囃される時代になる。
これを選択できない時代の流れと考える人もいますが、それは間違いです。
実際に「Small is Beautiful」が世界に広まったのも70年代なら、
80年代には第3の道が唱えられ、90年代には環境問題も表面化して、
エンデの遺言」などによる、おカネの問題も顕在化し始めていたのです。

それなのに、この国の進路は、無知な政治家と愚かなマスコミによって、
ひたすら金融マネー経済を押し進め、膨大な借金を積み上げてきたのです。
すなわちこれは失政であり、人災であって、知識人の敗北です。
アメリカはこの敗北を認めて、清算しながら新しい道を歩み始めた。

さて日本はどうするのか?
番組では、そこまでは追求できないようでしたが・・・・
未来を作るのは、僕ら個々人の選択なのです。



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