「グリーン革命」

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日本政府は、百年に一度と言われる社会的な危機を、
単なる不況や、景気経済の問題で済まそうとしていますが、
そんなことが通用しないことは、世界中の人が知っています。
それでは現代世界の危機とは何か?を明確に示すことで、
その解決への糸口を示したのが、この本だと言えるでしょう。
去年アメリカ出版で話題となり、先月日本でも翻訳版が出た、
トーマス・フリードマンの「グリーン革命(上・下)」です。

この本の内容に合わせたような、オバマ大統領の政策もあって、
グリーン革命は、一気に世界の政治の表舞台に躍り出ました。
現代アメリカが抱える一番の課題、エネルギー問題において、
石油の安定供給を目指して、戦争までしてきたブッシュに代わり、
オバマ政権は、自然エネルギーの利用を目指す宣言をしています。
それは、今までのアメリカが目指した大量消費生活を見直して、
循環型の生活へと舵取りをする、百年に一度の大転換なのです。

現代社会に見られる、多くの新しい思想がそうであるように、
この本の物語も、911事件の後に現れた風景から始まります。
事件の後にアメリカは、イスラムを敵としてイラクに侵攻し、
その行為が反感を買うと知っていて、トルコ大使館を要塞化する。
ここからアメリカの独善による世界戦略が始まるのですが、
その理由が石油資源の確保であることは、誰もが知る通りです。
こうした選択によって、アメリカはエネルギー政策を誤り、
それまで有利な立場だった、グリーン革命の機を逃してしまう。

それに追随した日本も、同じようにグリーン化の機を逃し、
世界のトップだった太陽光発電の出荷量も落ち込むのですが、
アメリカの痛手は、日本以上に深刻だったことがわかります。
なにしろ戦争当事者ですから、異論も言えない政治になって、
石油業界を利さない環境産業は、政策外に追いやられてしまう。
それまで環境技術でトップだったアメリカは、一気に堕ちて、
後から走っていたはずのヨーロッパが、トップに躍り出たのです。
そして今では、中国さえグリーン化が始まっていると言います。

政治体制や経済システムを超えて、グリーン化が進むのは、
開発途上国が、旧来のアメリカ型大量消費社会を追随しては、
世界の資源や環境が、もう維持できないとわかっているからです。
旧来の価値観で成長しようとすれば、奪い合うしかない現状で、
それを知れば誰だって、新たな道を探るしかないとわかるのです。
しかもその道は無いのではなく、すでにある程度見えているから、
重要なのは、誰がその新しい世界のリーダーになるかの争いで、
アメリカはそれに乗り遅れてはならないと言うのが本の主旨です。

具体的な方法として、彼は電力に一番注目しているのですが、
アメリカでは、医療や自動車産業には補助金を大量に使いながら、
電力業界の変革は何もしてこなかったので、ここを問題視します。
内燃機関でオイルとCO2をまき散らす自動車産業が潰れても、
電力のインフラがグリーンで賄えるように改革が進んだなら、
その技術を海外へ輸出しながら、自国のエネルギーも賄えるし、
すでに枯渇が時間の問題となっている石油に代わって、電力が、
ガソリンに代わる動力となって、世界を動かせばいいと考える。

こうしたグリーン革命の技術は、もう目前に見えているので、
今は迷うことなく、世界中がグリーンを目指して競う時代になる。
これがうまく行けば、アラブ諸国に膨大なオイルマネーを支払い、
そのドルが回ってイスラムのテロリストを育てることを止め、
結果として、アメリカの安全保障にさえ繋がってくると指摘する。
さらに世界最強の米軍にとっても、脱オイルは重要なポイントで、
戦地へオイルを運ぶより、戦地の太陽光や風を使って発電する方が、
危険も少なく、効率のよい補給活動が出来るとしているのです。

上下巻を通して、読みごたえのある分量と内容でしたので、
ここにその内容を、すべて網羅して書くことはできませんが、
この本が何を目指して書かれたものかは、紹介できたと思います。
グリーンエネルギーへの転換を目指す、オバマ大統領の登場で、
アメリカは一気にグリーン革命を進めるとすれば、日本だって、
いずれ旧来の技術は役に立たなくなる可能性が高いのです。
僕らが散々言っても聞かない役人も、アメリカが変われば変わる。
それでもいいから、さっさと循環型の社会に転換して欲しい!

今世界で何が起きているかを知る上でも、おおいに役立つ本です。
ぜひ少しでも多くの人に、読んでいただきたいと思っています。


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