沖縄密約

イメージ 1

昨日またどこかの番組で、沖縄返還にまつわる密約の特集がありました。
事実関係が良くわからないので、今まで記事にしたことはないのですが、
やっぱり日本の裁判は、まともな判断をしているとは思われないので、
その事だけを、少し思うままに書き残しておこうと思います。

この沖縄密約とは、1972年の春に沖縄返還交渉が行われた際に、
(1)核兵器を含む米軍基地の自由使用に関する保証と、
(2)表に出さない膨大な金額の支払い、があったとされるものです。
この点に関し、政府は一貫して否定してきているのですが、
当時ノーベル平和賞を受けた佐藤栄作氏は、国会の答弁で、
「国家の機密はあるのであり、機密保護法はぜひ必要」と公言しています。

そして当時毎日新聞の記者だった西山太吉さんは、沖縄密約をすっぱ抜き、
情報を流した外務省事務官が、国家公務員法違反で有罪判決を受けたのです。
これに対して西山さんは、国民の知る権利を盾に裁判で闘いますが、
政府はあくまで密約はないとして、1978年の最高裁判決で彼も有罪が確定します。

ここまでは、裁判所は提出された証拠から西山さんを有罪としたのであり、
国民の知る権利はどうなるのかとの危惧はあっても、判断にも納得出来る。
ところがその後、アメリカの公文書が25年の秘匿期間を過ぎて後悔されると、
1972年に行われた日米の沖縄返還交渉の詳細が、次々に明るみに出て、
どうやらこの密約は、実際にあった可能性が大きくなってきたのです。
さらに元外務省官僚も、西山さんの指摘を認める発言も始めました。

これで西山さんは、2005年4月に名誉毀損損害賠償請求裁判を提訴をしますが、
2007年3月に、東京地方裁判所で請求却下となり、現在も控訴されているのです。
この裁判は、表面的には個人の名誉毀損を訴えているわけですが、
実際には沖縄返還がこうした密約によって成り立っているために、
沖縄にはいまだに膨大な米軍基地があって、治外法権状態であることを指摘。
密約の全容を明らかにすることで、国民の知る権利を訴えているのです。

ところが裁判所の対応は、
 一、除斥期間(権利の法定存続期間、20年)により損害賠償の請求権は消滅
 一、除斥期間の適用を妨げる事情は認められない
 一、検察官に再審請求義務なし
 一、政府高官の「密約」否定発言は名誉棄損にはあたらない
 一、河野洋平元外相による吉野文六元外務省局長への密約否定要請は証拠がない
 一、その他は時機に遅れた攻撃方法であり、却下
として、政治の闇にうごめいた事実関係を検証することを拒んだのです。

つまり、日本にはあらゆる公文書を公開する法律が無く、
アメリカの外交公文書が公開される25年後には、訴訟権利もないってことです。
ご丁寧にも、「検察官に再審請求義務なし」とまで言っています。
いったいこの「時機に遅れた攻撃方法」とは何なのでしょうか?

こうした密約が基点となって、沖縄では米軍が公然と新しい基地を要求し、
辺野古では沖縄県民よりも、アメリカの事情が優先された判断がなされていく。
これが事実だとすれば、あまりにもお粗末な日本の政治と裁判ではないですか!

それでも今年5月には、多くの良心的司法関係者の智恵と工夫で、
イラクへの自衛隊派遣が違憲だとする司法判断を、確定する判決がありました。
憲法に従って考えればあたりまえのことが、ようやく認められるようになった!
こうした人々の努力の成果を大切にして、司法も正道を進んでいただきたい。
沖縄密約裁判から、そんなことを望まずにはいられませんでした。



西山太吉さんの著書「沖縄密約と日米同盟」は、(↓)こちらから。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4004310733?ie=UTF8&tag=isobehon-22